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2024年04月29日19:21

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「京都細見美術館の名品」/静岡市美術館

4/27(土)、静岡市に出て、市美術館で開催中の「京都細見美術館の名品～琳派、若冲、ときめきの日本美術」を観た。

この日はちょうど講演「細見コレクションで楽しむ琳派」があり、抽選に当たっていたので、併せてそれを聴いた。

細見美術館は1998年、京都市左京区岡崎にオープン、本展は開館25周年の記念展でもある。
・巡回と会期
大阪高島屋(’23.3.22～4.10)、東京・日本橋高島屋(’23.4.26～5.15)、JR名古屋タカシマヤ(’23.12.23～’24.1.7)と巡回し、静岡市美術館(’24.4.13～5.26)のあと最後は長野県立美術館(10.5～11.17)へ。

細見美術館は実業家細見良(初代古香庵/1901-78)、その長男細見實(二代目古香庵/1922-2006)、孫細見良行(現館長/1954- )の三代が収集したコレクションを展示するために創設された。
コレクションは1000点に及ぶが、その中から選ばれた104点が本展に来ている。

展覧会は以下の5章で構成されている。
Ⅰ「祈りのかたち」
Ⅱ「数寄の心」
Ⅲ「華やぎのとき」
Ⅳ「琳派への憧れ」
Ⅴ「若冲のちから」

Ⅰ,Ⅱは初代細見良によるコレクションで、そのⅠは古代～中世、仏教,神道にまつわる工芸品や絵画。Ⅱは茶の湯関係の器・道具類、そして墨画。
Ⅰ～Ⅱには重要文化財8点、重要美術品7点が含まれる。

初代良が「祈り」と「数寄」ならば、二代目實の収集は「華やぎ」と言える。
Ⅲには、金屏風、金蒔絵、七宝、そして近世風俗画等が展示されている。

二代目の「華やぎ」の精神は琳派(Ⅳ)につながる。
實は「この画派を末流迄辿りたい」と、琳派”開発”を徹底して拡げていく。この辺りが、当日の講演の主テーマとなった。講師は細見美術館主任学芸員の福井麻純。

そして、当時はまだあまり知られていなかった伊藤若冲(Ⅴ)へと實の目は開かれていく事になる。
当館は若冲を19点所蔵していて、本展にはその全てが来ている。

主要作品をいくつか観ていこう。

Ⅰから《金銅春日神鹿御正体(かすがしんろくみしょうたい)》(南北朝時代･14世紀)；重要文化財

春日大社の使いである鹿をまるで生きているかのようにかたどった金銅作品。
同社祭神武甕槌命（たけみかづちのみこと）が常陸国鹿島から春日へ移った時の様子を表現している。
白雲の上に立ち、鞍には月が懸かる榊、それには神の正体である本地仏5体が線刻されている。中央には阿弥陀如来(＝春日一宮)、右上に薬師如来(＝二宮)、左上に地蔵菩薩(三宮)、左下に十一面観音(四宮)、右下に文殊菩薩(若宮) 。つまり「春日曼荼羅」と言っていいものになっている。

Ⅲから《七宝夕顔文釘隠》(桃山-江戸時代･17世紀)

「釘隠」とは、柱等に使った釘の頭を隠すための飾り物である。
これは聚楽第で使われたと伝えられる、大型の銅製･象嵌七宝製。
本来の目的のみを考えれば、こんなに豪華なものは要らない筈なのだが…。
他に、家具の引手等もあり。

Ⅳから中村芳中(ほうちゅう)の《白梅小禽図屏風》六曲一隻(江戸時代後期)

琳派としては殆ど知られてこなかった画家だが、二代目實の琳派への愛着がコレクションとして結実した。
中村芳中(？-1819)は江戸琳派の祖酒井抱一とほぼ同時代人と考えられるが、師弟関係等その生涯は詳しく知られていない。
大阪で活躍、木村蒹葭堂とも交流があった。
1799(寛政11)年には江戸へ出た。
その後もしばしば江戸を訪れ、1802(享和2)年には江戸で《光琳画譜》を刊行。自ら描いた光琳風作品をまとめたもの。
上に貼付した作品でも、木の幹に俵屋宗達が開発したと言われる「たらし込み」技法が用いられている。
極端に単純化された梅の花、嘴を開けた鳥ののんびりした表情に面白味がある。

同じⅣから神坂雪佳(かみさかせっか)の《金魚玉図》(明治時代末期)

江戸末1866(慶応2)年に京都で生まれ、1942(昭和17)年に没した近現代の画家･図案家。
1890(明治23)年、図案家岸光景に師事、岸が琳派に傾倒していた事から同派に魅かれる事となった。
岸と伴に本阿弥光悦を顕彰する「光悦会」発起人となった。
琳派は、現代も多くの画家に影響を与え続けている。

本作でも、金魚の体にたらし込み技法が用いられている。
アングルとレイアウトの妙につい微笑んでしまう。

「金魚玉」とは、球形のガラス製金魚鉢。軒先に吊るして涼とした。

Ⅴから伊藤若冲(1716-1800)。
冒頭のチラシ画像のメインは若冲の《雪中雄鶏図》(江戸中期)部分。
絢爛たる色使い。その羽根の生き生きとした様。胸毛のふわふわした手触り感。そして、なまなましい迄のトサカと足。

下は《糸瓜群虫図》(江戸中期)。