■磯田道史「感染症の日本史」2020年9月文春新書
日本史について、一般読者に分かりやすい本を書いて、読者の人気が高い著者に
磯田道史さんがある。
磯田さんは、2003年に「武士の家計簿」を新潮新書で書いて、大人気になり、
世に出て、この本を原作に、2010年は映画化もされた。
その磯田さんが、新型コロナ感染拡大をめぐって、今年になってから、文藝春秋に
頻繁に文章を書いていて、本書は、それをまとめたもの。
私は、磯田さんの読者になっていたので、文句なく本書を手に取った。
そういえば、コロナ禍のさなか、春に「感染症の世界史」を読んで、読書日記も
書いている↓のだが、なんとこの本の著者は、義理の叔父だという。
https://mixi.jp/view_diary.pl?id=1975398154&owner_id=5540901
さて、本書の惹句を紹介しますね。
“歴史上、最も多くの命を奪ってきた脅威がパンデミックだ。新型コロナウイルスの
ワクチン、治療薬も確立していない今、歴史を見つめ直す必要がある。”
“一級の歴史家が、平安の史書、江戸の随筆、百年前の政治家や文豪の日記などから、
新たな視点で日本人の知恵に光をあてる。”
章立てと小見出しの抜粋も紹介。
■第一章 人類史上最大の脅威
・牧畜の開始とコロナウイルス
・ペリー艦隊が運んできた感染症
・スペイン風邪は波状的に襲ってきた
■第二章 日本史のなかの感染症――世界一の「衛生観念」のルーツ
・「最初の天皇」と疫病
・奈良の大仏は天然痘対策？
・江戸の医学者の隔離予防論
■第三章 江戸のパンデミックを読み解く
・すでにあった給付金
・薬をただで配った大坂の商人たち
・上杉鷹山の患者支援策
■第四章 はしかが歴史を動かした
・「横綱級」のウイルスに備えるには
・都市化とパンデミック
・麻疹が海を渡る
■第五章 感染の波は何度も襲来する ――スペイン風邪百年目の教訓
・高まった致死率
・百年前と変わらない自粛文化
・「「感染者叩き」は百害あって一利なし
■第六章 患者史のすすめ――京都女学生の「感染日記」
・日記が伝える「生きた歴史」
・ついに学校が休校に
■第七章 皇室も宰相も襲われた
・原敬、インフルエンザに倒れる
・昭和天皇はどこで感染したか？
・重篤だった秩父宮
■第八章 文学者たちのスペイン風邪
・志賀直哉のインフルエンザ小説
・�犁楝�賢治の�犂萎�な予防策��
・荷風は二度かかった？
■第九章 歴史人口学は「命」の学問 ――わが師・速水融のことども
・数字の向こう側に
・晩年に取り組んだ感染症研究
第九章で、著者は、次のように述懐します。
“古文書や歴史学の研究者である私が、なぜ、これほどまでに感染症の歴史に
かかわったのかについて述べれば、「歴史人口学」の泰斗であった恩師・速水融
の話をしなければなりません。”
“そもそも、人口とは、その時代にどれだけの人々が生き延びることが出来たか、
人生を全うすることが出来たかを表す指標であります。その意味で速水史学は
「命の学問」であったともいえるでしょう。”
“速水先生との出会いがなければ、私の学問人生はありませんでした。私の歴史家
としての方向性を決めるうえで、最も影響を受けた人物です。”
なんだか、読んでいて、じーんときちゃいました(^^♪
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