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2018年02月08日08:42

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読書日記No.1065(中沢新一による東京聖地考)

■中沢新一「アースダイバー 東京の聖地」2017年12月講談社刊

立春とは名ばかりで、日本列島は、ここ2週間ほど、寒波に包まれているようで、
福井県では豪雪被害が出、東京などでも、インフルエンザが猛威をふるっていますが、
マイミクの皆さんは、ご健勝でいらっしゃいますか?

私も、仕事の合間の道楽読書に助けられて、なんとか風邪もひかずに、過ごして
おります。

さて、本日の読書日記は、「アースダイバー」シリーズです。

人類学者・思想家の中沢新一さんの「アースダイバー」シリーズは、2005年に
刊行された東京の「アースダイバー」、2012年に刊行された「大阪アースダイバー」
など、ずっと馴染んできました。

アースダイバーとは、直訳すれば、地の潜水人のような意味だが、中沢新一は
縄文時代の地形図に現代の地図上の神社、古墳、墓地、遺跡等をマッピングして
人類と地形の相互交渉の過程に光をあてて、人間の無意識にある表現を、土地
との関わりで読み解いたもの。

地形の古層が、土地の上で暮らさなければならない、人間にどのような影響を
与えたかが、深層心理が解き明かされるように、中沢新一さんの文体で著述されると
身体の芯から、びりびり震えるような感動に包まれます。

早速、本書の惹句を紹介。

“海民の二千年の知恵=築地市場、太古の無意識の現出=明治神宮。この二つの
場所には、日本人の思考が「聖地」に見出してきた空間の構成原理が、ほとんど
純粋な状態で実現されている。”

“その二つの生きた聖地が、深刻な危機に直面したのである。金銭にかえられない
「愛」と「富」のありか。建築家・伊東豊雄氏との対談2編収録。”

さらに、ちょっと長いですが、内容紹介も引用。

“2020年の東京オリンピックを錦の御旗に東京は大改造をされようとしています。
レガシーを作ると言って、本物のレガシーを破壊していいのでしょうか?”

“築地市場の豊洲への移転が、決定しました。しかしアースダイバーは言って
おきたいことがあります。なぜ、築地でなくてはならないのか? 日本人と海の関係、
古代から連綿と続く、市場の特別な機能、江戸時代から紆余曲折を経て現代に
繋がる歴史……。築地という場所が孕んでいる聖地性が見えてきます。”

“仲卸の果たす重要な役割、博物館に匹敵する海産物に対する深い知の体系。
効率だけを考えた豊洲市場への移転はこの国の文化の大切な暗黙知を消滅させて
しまいます。”

“2014年には新国立競技場のデザインと費用について、大論争が巻き起こり、
最終的にはザハ・ハディッド案は廃案に追い込まれました。独創的なデザインの
新国立競技場に、無意識的になんかおかしいぞと感じたのはなぜでしょうか? ”

“アースダイバー的視点から、その理由をあらためて解き明かしてみると、
外苑と明治神宮との不可分な関係があったことに気づかされます。
アースダイバーの号外として、静かだが重要な提言をします。”

今回のアースダイバーは、前回までのように、縄文時代の地形との相関ではなく、
日本人の思考が「聖地」に見出してきた空間の構成原理、東京の地形の裏に
貼りついた古代的思考のプログラムがどうなっているかの考察でした。

築地市場の豊洲移転、新国立競技場の建設という、アクティブなテーマに、
中沢新一さんの人類学的な手法が、どのように迫るかが、見所でしたが、
ああそうだったのかと、腑に落ちました。

アクティブなテーマの問題解決というより、中沢新一さんの文体や思考を楽しむ
という道楽読書でした♪
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