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2016年03月05日21:26

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読書日記Nо.895(佐治敬三と開高健)

■北康利「佐治敬三と開高健 最強のふたり」2015年8月講談社刊

私の道楽読書日記の対象ジャンルは、多岐にわたるが、好きなジャンル
のひとつに評伝がある。

評伝とは、ひとりの人の生きざまを、ノンフィクションとして、あるいは、
フィクションの粉もまぶして物語るジャンルだが、心に染み入るのですね。

評伝作家も、いろいろいらっしゃるが、好きな作家としては、佐野眞一さんや
猪瀬直樹さんかな。

佐野さんの作品では、孫正義さんや、中内功さんや、小泉純一郎さんの評伝
がすばらしかったし、猪瀬直樹さんの作品では、三島由紀夫さんや太宰治さん、
大宅壮一さんの評伝が素晴らしかった。

そんな評伝好きの私が手に取ったのは、佐治敬三さんと開高健さんふたりの
交友も含めてダブル評伝である、本書。

前読書日記で、戦後日本の酒の歴史の新書を取り上げたが、本書もそれに
かぶる部分がある。なにせ、サントリーに関することだから。

でも、それはたまたまで、あくまで、佐治敬三と開高健の名に惹かれたから。

本書の惹句を、ちと長いですが、紹介しますね。

“真の経営者とはなにか。真の小説家とはなにか。そしてほんとうの友情とはなにか
――300万人の命が失われ、焦土と化した日本が奇跡の復興へとむかう、高度成長期、
やんちゃな経営者と作家が友情で結ばれ、たぐいまれなタッグを組んで、次々とヒッ
トを飛ばす。”

“サントリーがまだ寿屋と呼ばれていた時代、貧困のどん底から開高健を拾い上げ、
活躍の場を与えたのが、世界一のウイスキーをつくった男・佐治敬三であった。”

“開高はコピーライターとしての才能を花開かせ、在職中に芥川賞を受賞する。
開高は佐治を必要としたが、佐治もまた開高を必要とした。やがて二人は経営者と
社員という枠を越えた友情で結ばれていく。”

“佐治が身を置いていたビジネスの世界は経営者が生命をかけた戦いの場だが、
なかでも昭和三十六年(一九六一)のビール事業進出、ビールの巨人三社(キリン、
サッポロ、アサヒ)による寡占(かせん)に無謀な挑戦は、まさに「ビール戦争」と言って
いいものであった。”

“経営者の姿を自分に重ねあわせ、作家・開高も戦場に向かう。アメリカが正義を
旗印に介入した「ベトナム戦争」の渦中に身を投じる――。 ”

呑兵衛なら、サントリーは馴染みですし、1970年代の文学好きなら、開高健は、
外せない、その一粒で二度美味しい評伝が、本書。

いやぁ、昭和の歴史のダイナミズムが、通奏低音のように響いて、とてもいい評伝
でした。

著者の北康利さんは、1960年生まれで、金融マンだったが、退職して作家になり
評伝作家として、白洲次郎や松下幸之助の作品を書いている。

ビジネスパースンであり、文学にも造詣があったからこそ、書けた本書は、その両股
をかけている私にとっては、痺れるような読後感がありましたのです♪
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