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2014年06月29日18:40

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〜三つの恋患いの詩〜


●『黒焦げ』13/03/27


いつも真夜中に襲ってくる

暗闇を必死で逃げまどい
後ろから羽交い締めにされながら、
重くのし掛かるはかない面影に
うつ伏せになってのたうち回る

どのくじを引いたとしても
逃れる見込みがないのは
始まりから分かっている

淡く鮮やかな真珠に魅せられ
自然発火した体は激しい火焔をあげ
やがて燃え尽きて炭になり
くすぶる眼だけが宙を仰ぎ
忘れ去られて立ち竦む石になる

魂は胸を突き破れもせず
光の傍の群像の影にひしゃげ
沈黙の屍と化したあと
黒焦げの塊を雑踏のもとにさらすだろう



●『恋闇』14/02/24


溢れかえるほどの血をおくり
押し潰されそうな苦しさを与え
そこから逃げよと言わんばかりに
恋女に向かわせようとする者よ

この孤独な静寂に閉じこめられた男に
今、何が出来ると言うのだ

満月の夜に吠える犬の哀しい調べが
うつ伏せでうずくまる耳をこじ開け
食い縛る歯をきしませながら
地底の闇からうなり声がもれる

細く高らかに響く鳥のさえずりも
白く透きとおる翅のはばたきも
近づける両手の前で黒い煙と果て
梟の翼と化した影に逃げまどう

"光よ我にそそぎたまへ"

窓硝子に光る一筋のつゆに虚しく溺れる




●『火焔の夜』14/06/29


深夜放送も襖のむこうで消え去り
微かな耳鳴りだけが頭を貫いている。

美しいシンフォニーを宇宙に響かせようと
指揮台に立って顎を上げる。
目の前の指は何かを掴もうとしている。

何?
胸の底で小さな星がきらめく。

目を凝らせば
燃えさかる星。
向かい来る熱波の嵐。

嗚呼、今夜も。

毛細血管の隅々にまでマグマをはらませ
頭上に降りかかる火焔の雨にぬれる。

むな板に一文字の裂け目が。
また、今夜も落ちていく。

焔に抱かれながら見上げたむねに
やわらかく閉じる口。

勝手に燃えていく体に
さしのべられる手は無い。





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