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2014年06月11日17:03

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徒然「語り」

 ちょっと面白い話が、と前置きをする話に限って面白いものは一つもない。マーフィーの法則ってやつか?
 例えば、交響曲を3楽章、1楽章、4楽章、2楽章の順に聴いても面白くないだろうなあと言うことと同じで、彼が話を聞いたXという男は、「話」が面白かったというより、「語り」が面白かった筈だ。Xは演出が上手かったのだ。

 私が自分の店でお客に語ると、「感動しました」とか、「貴方と出会えたのは財産です」とか言われたり、「この人、凄ぇっすよ」と他人に言いふらされたりした事があったのだが、その場に居合わせていた仕事の相棒が、「俺も昭ちゃんのように言われたい」と思ったのだろう、語る真似事をしだした。結果は散々である。
 「語り」は、ちょっと知識があれば出来るってものでもない。伝える事は普通の人ならば出来る。しかし、人の心を動かす「語り」を習得するには、数年の訓練が必要である。

 私は、実は、幼少から無口であった。高校の同窓会などで友人に会うとよく、「お前マジで変わったなあ」などと言われる。そんな私には転機が幾つかあった。初めは『人間改造計画』と銘をうち、自分でその転機を作った。高校を卒業して、大学入試に失敗して自宅浪人(所謂、宅浪)をし始めたころである。
 出先で知らない人に時間を訊く事でさえおそれるほどウジウジしていた私は、
「つまらん、そんなんじゃつまらん!」
(訳;駄目だ、そんな事では駄目だ!)
と思い、その計画を立てたのである。
 内容は、今思えば大した事ではない。それまで敬遠していた事を敢えてやる。そのことで、性格を変えていく。というものだった。

1)ロックを聴くこと
2)女性とは積極的に話し、赤面しても、
「よかやろもん、恥ずかしいっちゃけ、しょうがないやん!
(訳;良いではないか、(実際)恥ずかしいのであるから、仕様がないであろう、捨ておけ!)
と頑張って話し続けること。
3)本屋でエロ本を定期的に堂々と買うこと。
4)何か面倒な役割があれば、率先して名乗りをあげること。

言うまでもないが、この中でも3)は特に必須科目である。

大学に入ってもこれらを実行していた私は、入学後もメキメキと性格が変わっていき、入学当初からの親友(荻野目洋子に似た可愛い男あせあせ(飛び散る汗))からは、
「おまぇ、変わったな、不良〜、不良〜」
と侮蔑されたものだ。私はその仕返しに奴の本棚の奥から『小林〇〇み写真集』を探しだし、引っ張り出しては、奴の目の前で舐めるように見てやったのだ。仕返しの為だけに、であるから勘違い無きよう。

 また、下手だとしても積極的な人間は、会社に気に入られるのである。
☆飲み会、旅行などの幹事。社長からは、
「君が適任だ」と言われ、
「(え〜、無理無理無理)有り難うございます」と言わざるを得ない。宴会では盛り上げる為に、カラオケで、尾崎豊『15の夜』西城秀樹『傷だらけのローラ』など数々のヒット曲を声まね、振り付け有りで盛り上げた。
☆地域の祭では奇抜な衣装、着ぐるみデザイン製作でテレビ取材ゲットで社長大喜び
☆会社セレモニーでは、音楽、照明効果監督。スポットを浴びた社長は御満悦。
などなど、会社から独立した後も、会社の歴史について本を出すということでインタビューを受けて、社長の悪口をいい続けたが、怒られもせず、そのほとんどが掲載された。(間違っても、女性関係の話は口にしなかったが)

 だんだん主旨からずれてしまったので戻そう。

 独立後、ほったて小屋からスタートした。詳しい話は出来ないが、お客を一度は笑わせてお引き取り願うということを自分に課した。ひょんなことから地域のファッション業界と結び付くようになった。そのカリスマとも。それを機にプチセレブやファッションに煩いOLたちがほったて小屋に着飾ったまま来るようになった。ファッションの話を面白可笑しく話すことを自分に課さざるを得なくなった。もちろん本業にアーティスティクな職人技を加えるのは当然のことである。

 その頃、プライベートで、いろんな障害をもつ人々と知り合うようになり、不仲や命に関わる問題が発生するたびに、説得、特に人間関係の修復修正、事件における責任は当事者に薄いと感じさせる調整、をせざるをえなくなった。仕事をしながら、説得のシミュレーションを無言でやる。口元、舌をかすかに動かすが声は出さない。特にアルコール依存性の人間に酒を止めさせる演出には数年かかった。(もちろん解決しなかったことも2つある。悔やまれるが仕方がない)

 そんな訳である。語る訓練をしたと言えば、した。しかし、それは、相手の意識を徐々に正しい、あるいは平穏な方向へ導くためのツールとして使っていた。語りはその産物である。

 詩、小説と違って、会話、狭い意味での語り、は生き物である。それゆえ、シミュレーションの際は、いろんなパターンを重ねながら答えを導いていく。そういう訳で、例えば、お客の好奇心を、話の小出し(私は撒き餌と呼ぶ)による、表情や身の乗り出し方というバロメーターから見つけ出して軌道修正しながら話の港につけるのである。

今でも一人作業しながら舌が動いている。

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