引き続き、友人から長くお借りしていたDVDで、WOWOWで放映されたメト・ライブビューイング2014-15シーズンの《マクベス》を観たので、少し触れておこう。
こちらも、たたまたまアンナ・ネトレプコである。
データは以下の通り。
指揮 ファビオ・ルイージ
演奏 メトロポリタン歌劇場管弦楽団/同合唱団
演出 エイドリアン・ノーブル
出演
マクベス ジェリコ・ルチッチ(Br)
マクベス夫人 アンナ・ネトレプコ(S)
バンクォー ルネ・パーペ(B)
マクダフ ジョセフ・カレーヤ(T)
収録 2014年10/12メトロポリタン歌劇場公演
ネトレプコにとって、2014年10月、この公演でのマクベス夫人が自身初の挑戦であった。
金髪に髪を染めてマリリン・モンローのような出で立ちである。
先日観たベルリン国立歌劇場公演はその4年後で、鈍色(にびいろ)の声質や静かな狂気の演技において更に集中度と成熟度を増しているように思えた。
エイドリアン・ノーブルの演出は、クプファーの重く暗い表現主義に比して、滑稽味を加えたハリウッド的妙味であった。
例えば冒頭に登場する魔女達は、如何にも普通のおばさん達といった風で、コミカルな軽いノリで踊る。人を焚きつけて滅亡をもたらす邪悪な連中は、このインターネット時代、何処にでもいるという事を暗喩しているのだろう。
第1幕第2場、ダンカン王殺しのシーンは、ハリウッド映画を観るようで、マクベスは両手と白いシルクのシャツを真っ赤な血でべっとり染めて王の寝室から出てくる。
配色の強烈なコントラスト。
マクベスは興奮と後悔で騒ぐ。
ベルリン国立オペラでは、暗い舞台、寝室の狭い出入口から血がとろりと静かに流れ出てくる。
如何にもドイツ表現主義的な見せ方で、2公演、実に対照的だ。
バンクォーに当代一のバス ルネ・パーペを配する等、こちらもキャスティングに驚く。
マクベスを演じたバリトンのジェリコ・ルチッチは、今月観た英国ロイヤルオペラの《アンドレア・シェニエ》ではカルロ・ジェラール役をやっていた。
強面のマッチョだが、内面に弱さを持つマクベスをちらりと垣間見せる。
病的な迄の性格表現は、ドミンゴに一日の長があるようだった。
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