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2016年08月06日19:51

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読書日記Nо.936(「こつ」と「スランプ」の研究)

■諏訪正樹「『こつ』と『スランプ』の研究」2016年6月講談社選書メチエ

副題は“身体知の認知科学”。

俗に、「腑に落ちる」と言いますが、物事を本当に理解するためには、
頭の先っぽの理屈ではなく、腹にストンと落ちなければ身につかない
ということを、感じたり経験したりしたことがありませんか?

身体知とは、その、「腑に落ちる」感覚のことですが、著者は、最初に
次のように言っています。

“「身体知」とは、身体と頭(ことば)を駆使して体得する、身体に根ざした
知のことです。身体知の学びにおいて、スランプは必要不可欠なできごと
です。”

“身体で実践し、ことばで色々考えて試行錯誤することを通じてスランプ
から抜け出したときに、身体知を学んだ状態(「こつ」の体得)に辿りつけます。
新しい「こつ」を体得することで、真新しい風景が見えるようになるのです。”

なぜ、本書を手に取ったかといえば、身体知について、たいへん興味が
あるからです。

私は、内田樹さんのコアな読者ですが、彼の政治的な発言には、必ずしも
同意していません。ではなぜ読むのかというと、身体知についての文章に、
他では出会えない冴えを感じるからです。

では、さっそく、惹句を紹介。

“スポーツ、運転、仕事、家事、話し方……身体を使うすべてのモノゴトに
「こつ」は存在し、「スランプ」は学びの必然である。スランプを乗り越え、こつを
体得するとはどういうことか。”

“内角高めの球を打つ、料理の火加減を調節する、説得力あるプレゼンをする
…スランプではことばが増え、こつをつかむと体感で御す。「からだ」の学びに、
なぜ「ことば」が必要なのか?身体知の解明に挑む、認知科学の最前線! ”

内容紹介も少し。

“自転車や車の運転から水泳、ゴルフ、仕事のやり方まで、「身体がおぼえる」、
「こつをつかむ」、あるいは「スランプに陥る」のは、誰もが経験したことではない
でしょうか。”

“本書は、そうした「身体に根ざした知」=「身体知」と、「身体知を学ぶ」とは一体
どういうことなのかを、イチロー選手なども例にとりつつ、認知科学という立場
から解明し、更に「身体知の研究はどうあるべきか」について明快に論じます。”

“こつをつかむにも、スランプを脱するにも、「ことば」が重要であるらしいことが
わかってきました。〈からだメタ認知〉という概念をキーワードに、身体とことばの
共創をめぐる最先端の研究を、わかりやすく紹介します。”

目次の抜粋と小見出しの抜粋も、ちょとだけ紹介。

第一章 身体知の魅力 
・居心地を判別するからだ
・感性は身体知

第四章 身体知研究のあり方
・暗黙知と身体知
・ことばのシステムと身体のシステム

第五章 身体とことばの共創を生む学びのメソッド
・からだメタ認知
・創作オノマトペで体感をことばにする

第六章 スランプを乗り越え、こつを体得する
・スランプはなぜ必要か
・学びの既存理論 vs. からだメタ認知

第八章 身体知研究のこれから
・「足触り」の研究
・まだまだ神秘なる身体知

まぁ、興味深いテーマのオンパレードですが、本書は、新書ではなく
選書なので、専門領域にも踏み込んで、ちと難解なところも多々あった
ことは、告白しておきたいと思います。

新書が、高校生〜大学教養課程なら、選書は、大学学部レベルなんです。

でも、この領域のことは知りたいという、強い思い(志向性、嗜好性)が
ありますので、読み通すことができました。

最後に、とっても、心に残った言葉を紹介。

・ことばは身体から紡ぎだされる
・そうして生まれたことばは、身体を変容させる
・身体が変容すれば、紡ぎだされることばも変容する

私たちが、日常的に使うことばは、身体や現実を変容させる力があるので
とても怖いです。

だから、ネガティブな言葉や汚い言葉を、できるだけ使わないようにして、
ポジティブな言葉や、綺麗な言葉を使うと、現実がそのように変容するのです。
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