6/27(水)、静岡文化芸術大学の社会人聴講<西洋美術史��>の12回目授業。
前期は全15回だから、残りも少なくなってきた。じき第4コーナーに入る。
バロックの続き、フランドルのルーベンスの後、ヴァン・ダイクから。
アンソニー・ヴァン・ダイク(1599-1641)
ヴァン・ダイクは、先週話したルーベンスの大きな工房から出発した。
ルーベンスの最も優れた弟子と言われる。
工房の後、1632年33歳で渡英し、8年間チャールズ1世の宮廷画家として活躍、豪華な暮らしを得た。
チャールズ1世の肖像画を10点制作。
《狩猟場のチャールズ1世の肖像》1635頃、ルーヴル美術館 (→写真1)
肖像画以外にも、《アモルとプシュケ》1639-40、ロンドン、王室コレクション
《福者ヘルマン・ヨゼフの夢》1618-19、ウィーン美術史美術館、等、神話画、宗教画もものした。
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フランドルの北隣のオランダ、17世紀美術のもう1つの中心地。
オランダは、1581年にスペインから独立、世界で初めて王制でない市民社会を築いた。
フランス・ハルス(1580-1666)
ハルスは初めて「笑い顔」を絵にした画家だと言われる。
《笑う娼婦》1626、ルーヴル美術館
《陽気な酔っ払い》1628-30、アムステルダム国立美術館
…くだけた社会の雰囲気、日常的生活感が色濃い。モデルは貴人でなく市井の人々、名も判らない。
ヤン・ステーン(1626-79)
《医者の訪問》1661-62、ロンドン、ウェリントン美術館
…母親に乞われ、医者が来て、若い娘の熱を計っている。しかし、これは病気ではない、恋の病。それが証拠に、娘の前で当時の子供服を着て遊んでいる子の横には、籠の中に矢がある。つまり、この子はクピトだという訳だ。
《年寄りが歌えば、若者が笛を吹く》1628-30、ハーグ、マウリッツハイス美術館
…親達は呑み、酔っ払い、宴もたけなわ。1人の子供は、大人に奨められてタバコを吸っている。子供は親のマネをする、というオランダの警句。
レンブラント・ファン・レイン(1606-69)
美術史上最大の画家の1人と称される。
肖像,風景,宗教画、他に銅板画にも優れる。
《夜警》1642、アムステルダム国立美術館
…実際は昼間の室内。
集団肖像画は、モデル達の均一な共同出資によって注文されており、バランスよく描かなければならないが、この絵は極端にアンバランス。為に、受け取りを拒否された。前金は使い込んでいた為返金できず、成功の極みにあったレンブラントは、これによって名声が急激に墜ちていく。経済的にもどん底へ転がり出す。この絵の前年に名家出身の妻サスキア(絵の中央で輝いている子供のような女性像)が死んでおり、その精神的影響もあったか。
他に数々の自画像。
《東洋風の意匠を着た自画像》1631、パリ。プティ・パレ美術館
宗教画から、
《イサクの犠牲》1635、サンクトペテルブルク、エルミタージュ美術館
ヤコプ・ファン・ライスダール(1628-82)
初めて本格的な風景画を描く。
《ヴェイク・ベイ・デュールステーデの風車》1670、アムステルダム国立美術館
…貿易立国だったオランダ。相手国から、オランダとはどういう国か訊かれた時、オランダの風景画が役立った。
こうして、その相手国にも、風景画は広まっていった。
風車は、粉引きでなく、低い土地から高い土地へ水を排出する機能として作られた。
ヤン・フェルメール(1632-75)
室内画が描かれるようになるのは、17世紀のオランダから。
現存するのは30点強と極少。あまりの少なさに、美術史からは忘れ去られていた。
画面の美しさは、並ぶものがない。
《手紙を読む女》1658頃、ドレスデン国立絵画館
…柔らかな光。同じ光を描いたレンブラントは、もう少し強いそれで、その影との対比を重視した。
フェルメールは衣服や食べ物の質感表現の妙にも特徴。
両者の間に今のところ接点は見つけられていない。
レンブラント；売れっ子、当然多作、首都アムステルダム
フェルメール；片手間、寡作、田舎デルフト
《牛乳を注ぐ女》1658-60、アムステルダム国立美術館
…フェルメールブルー(ラピズラズリ)の使用。ウルトラマリンとも呼ばれ、海を越えた中東から輸入された。金と同等価格で取引される程高価。
それを、描かれる対象物として重要でない箇所にも使った。彼の生涯と同様、謎。
また、絵の目的(意味する世界)、注文主等も不明。
《音楽のレッスン》1662-65、ロンドン、王室コレクション
…ヴァージナルを演奏する女と、彼女を教える教師か、または愛人の関係か。鏡に映る女の顔は男を見つめている。音楽は男女の微妙な世界を象徴した。
《天秤を持つ女》1664、ワシントン、ナショナルギャラリー
…天秤はバランスが取れているが、何を計っているのか不明。背後の壁に《最期の審判》らしき図像。
《手紙を書く婦人と召使い》1670-72頃、ダブリン、アイルランド国立美術館
…召使いの服にラピズラズリ。
《画家とモデル(絵画芸術の寓意)》1666-67、ウィーン美術史美術館
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17世紀中頃のフランスは、中央集権を果たしたルイ王朝の繁栄の下、ヨーロッパ一の強大国家に成長。国力と文化の向上。
ジョルジュ・ド・ラ・トゥール(1593-1652)
カラヴァッジョの影響を受け、光と影の強烈な対比。
《大工の聖ヨセフ》1640頃、ルーヴル美術館
《聖セバスティァヌスの死を嘆く聖女イレーヌ》1649、ベルリン国立美術館
《いかさま師》1632、フォートワース、キンベル美術館(ルーヴルにも1635-38頃作の同題あり)
私が、現在のアルテミジア・ジェンティレスキの前にプロフィール写真として使っていたのが、このルーヴル版。 (→写真2)
キンベル版は、いかさまの共犯男の背中にはクラブのエース。
対してルーヴル版は、ダイヤのエース。
何れにしてもよく売れた図像なのだろう。カラヴァッジョにも似たものがある。
ル・ナン兄弟(アントワーヌとルイ1600/10頃-48,マチュウ07頃-77)
貧しい農民生活への共感。領主への報告画として描いたか？
《農民の家族》1642頃、ルーヴル美術館
《風景の中の農民たち》1642頃、ワシントン。ナショナルギャラリー
ニコラ・プッサン(1594-1665)
17世紀で最も偉大な仏宮廷画家。古典主義的バロック。
彼によって、フランス美術はヨーロッパの中心に躍り出た。
《マナの収集》1639、ルーヴル美術館
《サビニの女たちの掠奪》1634-38、メトロポリタン美術館
《アルカディアの牧人たち(我アルカディアにもあり)》1639、ルーヴル美術館
…意味不明。アルカディアは桃源郷の意。死んでも王(ルイ13世)は偉大、もしくは、偉大な王も死ぬ？。
クロード・ロラン(1600-82)
自然の中から、美しいと思われる部分をカットして組み合せた、理想的風景画。
《踊る人物のいる風景》1648頃、所在？
《タルスへのクレオパトラの上陸》1643、ルーヴル美術館
イアサント・リゴー(1659-1743)
太陽王ルイ14世の宮廷画家。
《ルイ14世の肖像》1701、ルーヴル美術館 (→写真3)
衣装と絨毯のユリの紋章はブルボン王家のもの。
ポーズは、ヴァン・ダイクの《狩場のチャールズ1世》と全く同じ。威厳を表す表象なのだろう。写真1と比較されたい。
ヴェルサイユ宮殿
ルイ14世の権力の象徴として作られた。
建物の設計はシャルル・ル・ブラン(1619-90)とジュール・アルドゥアン=マンサール(1646-1708)。庭園はアンドレ・ル・ノートル(1613-1700)。
初めて庭園が芸術となった。
幾何学模様の庭園は、西洋と東洋の自然感の違いの顕れを示す。
西洋では自然は征服すべきもの、東洋では自然は畏怖すべきもの。したがって東洋の庭園は自然の再現を目指す。噴水等、西洋の自然感からでなければ生まれない。
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