mixiユーザー(id:55664038)
日記一覧
- 第２回ステキブンゲイ大賞応募の自作品 1章解説
- 2021年05月01日00:21
『指を折ってと指折り待つ彼女』ちょいと短めの約３５０００文字の中篇。 第２回ステキブンゲイ大賞に応募した作品の一作目の解説。 〜あらすじ〜 大学生の平坂隆司はマゾヒストの恋人である竜宮之葉の欲求に困惑しつつも応えていた。 しかしあ
- 小説『指を折ってと指折り待つ彼女 河野霧子の発芽エピローグ』
- 2021年04月29日23:14
目隠しを取られた親友と画面越しに目が合った。 ハッとしながらも私は自然と微笑んでしまう。 回り道のように彼女の『彼女自身』に振り回されながらもやっと之葉は望んだ人を手に入れたのだ。 私以外の理解者を得たことは少し寂しくはあるけれど、それを
- 小説『指を折ってと指折り待つ彼女 河野霧子の発芽��』
- 2021年04月29日23:12
仕掛ける場所はすぐに決まった。 体育館横の用具準備室だ。 普段は施錠されてはいるが、鍵の管理がずさんで昔、誰かが合鍵を作っていていつでも出入りすることが出来るようになっている。 教師達は把握しておらず、けれど一部の生徒達はそれを知っていて
- 小説『指を折ってと指折り待つ彼女 河野霧子の発芽�◆�
- 2021年04月29日23:11
その日、私は具合が悪くて保健室で寝ていて、ウトウトとベッドでまどろんでいると不意に扉が開く音がした。 ああ、誰か来たのかと私は瞳を閉じながら気づき、また別のことにも気づいた。 その少し前に保険の先生が急な呼び出しで不在だったということ
- 小説『指を折ってと指折り待つ彼女 河野霧子の発芽� �
- 2021年04月29日23:10
離婚の理由として一番多いのは性格の不一致だそうだ。 それは結婚以前の付き合っている段階でも一番多いだろうということは私や私の回りを見ていればそう実感できる。 だが性格の不一致と一言で言えるその言葉の中、そこには事細かな理由が無数に存在して
- 小説『指を折ってと指折り待つ彼女 竜宮之葉の独白 エピローグ』
- 2021年04月29日23:09
強い痛みで一気に目が覚めた。 窓のカーテン越しから光の筋が漏れ、雀達の声が聞こえる。 同時にまた痛みが走った。 痛み止めを飲んでいたことで今日は少しだけ寝ることが出来たみたい。 とはいえそれも効果が切れたようで、あのときほどではないけ
- 小説『指を折ってと指折り待つ彼女 竜宮之葉の独白��』
- 2021年04月29日23:09
視界を遮られると、その他の感覚が鋭敏になる。 今日一緒に食べたコース料理のように私が用意した『前菜』を彼は望みどおりに振舞ってくれた。 すでに身体は熱くなっていて、痛みは身体中を駆け巡る快楽物質と結合して私を燃え上がらせている。 やがてその
- 小説『指を折ってと指折り待つ彼女 竜宮之葉の独白�◆�
- 2021年04月29日23:08
次の日、隆司君とお付き合いをすることになったこととその証として真っ青になったお腹を見せたときの霧子の表情は複雑だった。 形の良い眉と長い睫毛をしぱたせながら、それでもわずかに黙った後に「そう、よかったわね」とだけ言ってくれた。 私の『私』
- 小説『指を折ってと指折り待つ彼女 竜宮之葉の独白� �
- 2021年04月29日23:07
彼が無理をしていることには気づいていた。 けれど私は気づかないフリをしている。 なんて悪い女の子なんだろう。 自分でもそう思う。 でもだからといってそれを後悔する気もないの。 反省はたまにするけれど。 だってそれが私なんだもの。 どうしよ
- 小説『指を折ってと指折り待つ彼女 平坂隆司の葛藤 エピローグ』
- 2021年04月29日23:05
「あ〜あ、本当にやっちゃったのね」 呆れ半分、興味半分といったところの霧子が席に着くと同時に口を開いた。「…まあ、もうしょうがないよね」 講義の終了後、またいつかのように之葉を待ちながら僕と霧子は一緒に居た。 特段、別にあのときのことを霧子
- 小説『指を折ってと指折り待つ彼女 平坂隆司の葛藤�А�
- 2021年04月29日23:05
部屋の中は濃密な何かに支配されていた。 その中で間接照明だけで照らされた之葉の姿が網膜に移り、白い壁にはそれに魅了されている男の影がベッタリと張り付いている。 ベッドの下、絨毯の上で目隠しをされ、生まれたままの姿で両膝立ちをしている之葉
- 小説『指を折ってと指折り待つ彼女 平坂隆司の葛藤�Α�
- 2021年04月29日23:04
３階建ての映画館の２階、第４スクリーン室から出るとエスカレーターへと続く廊下は沢山の人々で賑わっていた。「映画、面白かったね〜、まさかあんなドンデン返しがあるなんてびっくりしちゃった」「そうだね〜、まさかあんな展開が来るなんてさ」 暗闇に
- 小説『指を折ってと指折り待つ彼女 平坂隆司の葛藤�ァ�
- 2021年04月29日23:04
霧子に相談をしてから数日がたつ。 同時に之葉と指折りの指切りをしてからも同じ日にちが。 待ち合わせに遅れないようにあらかじめ道のりを実際に歩いて確かめめた。 デートの際に見る予定の映画の前売り券も買ってある。 そして夕食を食べるためのお店の
- 小説『指を折ってと指折り待つ彼女 平坂隆司の葛藤�ぁ�
- 2021年04月29日23:03
「来週の１５日のことなんだけど…」 霧子に代わって席に着いた之葉にさっそく本題を切り出そうと言葉を紡ぐ。「うん、私もバイト休み取れたし、隆司君も休みだよね？ 誕生日デートはどこに行こうか？」 そう、来週の１５日は之葉の誕生日なのだ。 付き
- 小説『指を折ってと指折り待つ彼女 平坂隆司の葛藤��』
- 2021年04月29日23:01
「でもまさかなんだかんだでここまでもつとは思わなかったわね」 唐突に回想から引き戻された。 霧子は空っぽになったカップを弄びながら呟く。「正直、僕だってここまで頑張れるとは思わなかったよ」 自嘲気味なその言葉に霧子の目線がこちらに向く。 睨
- 小説『指を折ってと指折り待つ彼女 平坂隆司の葛藤�◆�
- 2021年04月29日23:01
「相変わらずヘンタイカップルね」 河野霧子は特徴的な切れ長の目で僕を見据えながらカップに口をつけた後、そう切り捨てた。「そんなこと言われてもさ…こっちだって困ってるんだよ」 ここは大学にあるカフェテリア。 向かいに座る霧子は涼しげな目元をさ
- 小説『指を折ってと指折り待つ彼女 平坂隆司の葛藤� �
- 2021年04月29日22:57
スマホをベッドのサイドテーブルに置く。 そして溜息を一つ。 これは覚悟を決めるため。 切り替えるため。 なぜならこれが必要不可欠な儀式なのだ。 僕にとって。 視線を横に向ければ、ひび割れたようにシワの入ったベッドの上には両手を頭の上で縛られ
- 詩『自らを由とするために必要なこと』
- 2021年03月28日14:48
たとえれば『意味』から抜けてみたその先は無限の空の中に漂う埃のよう取っ掛かりもない代わりにどこまでも自由ではあるけれどではあるのだけれどああ、どうにも不安で虚しいの自らを由と叫ぶには…？自らを由と叫ぶには…？自らを由と叫ぶには…？抵抗もない
- 詩『月に吠え、消えて生まれても寄り添う月』
- 2021年03月22日21:49
未熟な男が一人孤独にがなり怒鳴り続けているその先は雲であり、星であり、月であった彼はそれらを愛していた。 愛しているからこそ、その我儘な考えを理解せよと傲慢に振る舞う。そんな男心の幼さを馬鹿馬鹿しいと笑わないでおくれいつだって一人になればし
- 詩『蛍光の夜』
- 2021年03月22日09:33
朧げな現か夢か？はたまた在ったか無かったか？黒い夜の砂絵の中空で薄ぼんやり、青緑に灯す蛍光がポンポリ揺れて、揺られて、ヒラヒラリと手の腹に着く暖かくもない熱くもない溶けるように飛んでいき水田の中へ消えていくあれはなんだろうね？問いかけても答
- 小説『月は繭に包まれて』エピローグ
- 2021年03月20日21:18
初夜を向かえた寝室には夫婦二人だけ。 窓からは涼やかな夜風、そして上等のお香から立ち上る薄煙がそれに流れて消えていく。 開けはなたれた窓からからみえる星を眺めつつ、長いすに夫は足を投げだしてい て、その横に新妻がそっと腰掛けた。 かぐわ
- 小説『月は繭に包まれて』��
- 2021年03月20日21:17
街は騒がしい。 しかし酒色飯店の雰囲気はやや暗かった。 暗いというよりもひそひそとした噂話が選考している「あの爺さんが帝の反逆者とはな。 それじゃあの子もそうだったのか？」「まさか…おそらくは知らされなかったのだろうよ。あんな良い子がそん
- 小説『月は繭に包まれて』��
- 2021年03月20日21:15
暗い部屋の中、一人の老人がいた。 ブツブツと何かを祈っている。 額に汗を滲ませて何事かを口ずさんでいる。 ふと扉が開く音が聞こえる。 すぐに向かうと、そこには少女が一人立っていた。 「…ただいま帰りました」 泣きはらした瞼とやや枯れた声をし
- 小説『月は繭に包まれて』��
- 2021年03月20日21:15
「…では、行ってまいります」「うむ、しっかりと本願を果たしてくるがよい。そのためにお前は生まれたのだから」 蜀台が照らす灯火の中、寝台に座る叔父に向かって少女は膝をついていた。 服装は婚礼衣装のように華やかでまた綺麗に手入れされている。
- 小説『月は繭に包まれて』��
- 2021年03月20日21:14
馬で出かけたあの日から二人の仲に微妙な変化が訪れたように主人達は思えた。「…というわけでな酒を飲みすぎてしまってな、金殿にたっぷりと絞られてしまったよ」「フフ…、それは『陽』様が悪いと思いますよ、いくら楽しいからってそんなことをすれば叱ら
- 小説『月は繭に包まれて』��
- 2021年03月20日21:13
それから『陽』は酒色飯店に頻繁に来るようになった。 主に金と二人であることが多かったが、時には一人で来店することもあった。 だがその度に血相を変えた金が駆け込んできてはすぐに腕を引っ張って連れて行ってしまうのでどうやら勝手に出歩いて来てい
- 小説『月は繭に包まれて』��
- 2021年03月20日21:11
そこは広く、様々な花々で彩られていた。 野山のようにも思えたが、はるか向こうに高い壁で隔たれているところを見ると庭園なのだろう。 庭園と呼ぶにはあまりにも広い。 その広大な庭を子供が二人走っていた。 年齢は五歳。 もう一人は七歳である。 や
- 小説『月は繭に包まれて』��
- 2021年03月20日21:10
大国である『鋼』が勃興してから二百年の時がたっていた。 首都である『蓬莱』の市場は例年よりも賑やかで人々がごった返している。「聞いたかい？例の噂」「ああ、聞いたとも帝が嫁を取るって話だろ」「ああ、そうだ…数年前に前の帝が崩御なさって棚上げ
- 小説『月は繭に包まれて』 プロローグ
- 2021年03月20日21:07
扉を開けて外に出ると月はまだ西の空に鎮座していた。 その下を少女が一人、薄絹のような淡く白い吐息を手に吹きかけている。 朝というにはまだ少し早い、夜というにはあまりに儚い。 すっかりと身体に馴染んだつぎはぎだらけの麻服に身を縮みこませた
