『指を折ってと指折り待つ彼女』
ちょいと短めの約35000文字の中篇。 第2回ステキブンゲイ大賞に応募した作品の一作目の解説。
〜あらすじ〜
大学生の平坂隆司はマゾヒストの恋人である竜宮之葉の欲求に困惑しつつも応えていた。
しかしある日彼女に誕生日プレゼントとして私の指を折ってほしいと言われる。
困惑して葛藤する隆司。
自身の欲求が恋人を悩ませていることを知りながらも抑えられない之葉
そして之葉の友人でもある霧子もまた自身の度し難い性癖が発芽した過去を振り返る。
まず最初に思いついたのは第一章(正確には章とは書いていないけれど) 『平坂隆司の葛藤』だった。
彼女の極端なマゾヒズムに混乱しつつも、惚れた弱みと生来の生真面目さで悪戦苦闘しつつも乗り切っていくドタバタコメディ風が当初のコンセプトで書き始めてはみたんだけれど…。
作中の『900秒ルール』。 バスタオルを効果的に使った『安全な窒息プレイ』も最初の段階で右往左往する中で主人公が誰かの一言とか、何気ないヒントで自らが見つけていくというグルメマンガや推理物みたいな流れになるはずだった。
けれど現実的にはマイノリティではあるが、創作上ではメジャーな趣味なので、どうしても描写がどこかで見たようなシーンばかりになってしまうことに気がついた。
う〜ん、これはイカン! としばし悩む。
それならばともう一歩踏み込んでみようと思案していて考えこんでみた結果、「よし、指を折ろう!」というタイトルどおりの結論になった。
ほかに候補に考えていたものは『スカトロ』に『緊縛』があったけれど、『スカトロ』は行き着く過ぎて書けそうにないし、そもそも無理やり書いたところで尖り過ぎてて読める人は少なすぎるだろうと判断。
なにより自分自身にそういう趣味が全く無いから無理。
緊縛は描写的にどうしても地味であるということは否めないし、書くとしたら心理面が中心とフェチズム的になって冗長になるだろうと没にする。
『指折り』ならばギリギリフェチズム的にはならないだろう。
それに一章のクライマックス。
つまり主人公が恋人に見つめられながら指をへし折るシーンを想像してみて彼の『強制される加虐』と恋人の『強制する被虐』の対比としてゾクゾクした。
昔の歌の歌詞じゃないけれど、『恋なんてエゴとエゴのシーソーゲーム』なのだから。
書き続けていくうちにこの主人公達の関係はそういう外面的には『支配者』と『被支配者』。 しかし内面的にはそれが逆転しているというのがピッタリなのだ。
そして彼がへし折る指は悩むことなくすぐに決まった。 そこを彼が自ら選ぶというところがこれが恋愛物語であることを表している。
かりにこれを彼女が自ら決めてしまったら、それはただのフェチズム的になってしまうのでそれは考えなかった。
そして彼が真相に気づき始めて、自ら『二度と降りることの無い乗り物のようなチケットを破って乗り込む』ことを選んだことで彼と彼女が本当の恋人同士になるというハッピーエンドで終わる。
一章はここで終わり。
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