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2024年03月28日17:42

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読書日記N o.1604(アメリカと中国の「本質」を読み解く)

■内田樹「街場の米中論」2023年12月東洋経済新報社刊

最近、「もしトラ」という言葉をよく見聞きするようになりました。

その意は、「(今年の秋の米大統領選で)もしトランプが再選されたら」ですね。

それはないだろう、と思いきや、可能性としてはあり得る情勢のようなので、世界が
もしそうなったら、どうすべきか、対策を考え始めたようです。

一時の勢いはないにせよ、現在の最大の覇権国なので、そうせざるを得ません。

もう一方の覇権国・中国も、習近平がそれまでの約束事を破る形で、昨年、第3期の
政権をスタートさせたばかりで、台湾との関係が緊張感を孕んでいて、対外的な
動きに目が離せません。

現代の地政学を考える上で、避けて通れない、アメリカと中国がこれからどう動くか
について、内田樹さんが、両国の成り立ちから考察したのが本書です。

個人の思考や行動にクセがあるように、国の思考や行動にもクセがあります。

そのクセは、現象面だけでなく、成り立ちまで遡って考えると、案外見えてくるものが
あります。

本書の惹句を紹介しましょう。

”疫病と戦争で再強化される「国民国家」はどこへ向かうのか。
拮抗する「民主主義と権威主義」のゆくえは。
希代の思想家が覇権国「アメリカ」と「中国」の比較統治論から読み解く。”

内田樹さんは言います。

”アメリカにはアメリカの趨向性(あるいは戦略)があり、中国には中国の趨向性
(あるいは戦略)がある。それを見分けることができれば、彼らが「なぜ、こんな
ことをするのか?」、「これからどんなことをしそうか?」について妥当性の高い
仮説を立てることができる。それがこれからこの本の中で僕が試みようとしている
ことです。”

”アメリカと中国というプレイヤーがどうふるまうかによって、これからの世界の行方は
決まってきます。この二つの超大国がどういう統治原理によって存立しているのか、
短期的な政策よりも、基本的にどのような趨向性を持っているのか、それをよく観察
して、世界がこれからどういう方向に向かうのか、どのような分岐点が未来に待ち受け
ているのかを考えます。”

目次の抜粋と小見出しの抜粋も紹介します。

■第1章 帰ってきた「国民国家」時代の主導権争い
・米中どちらが主導権を握るか
・国家の趣向性
■第2章 自由のリアリティ
・食い合わせが悪い「自由」と「平等」
・つねに「始原の問いに立ち戻る」アメリカ
■第4章 解決不能な「自由」と「平等」
・合衆国憲法が常備軍の保持を禁止している理由
・解決不能の葛藤を抱えた国
■第5章 ポストモダン後にやってきた「陰謀論」時代
・陰謀論が蔓延する理由
・求められたシンプルな物語
■第8章 農民の飢餓
・中国崩壊のパターン
・「ポスト習近平」の時代
・地政学と民族心理
■第9章 米中対立の狭間で生きるということ
・不愉快な隣人たちとの共生
・「自由と平等」に欠かせない「友愛」

内田樹さんは、地政学を論じると、非常に面白い卓見を頻発されます。

それは、最初にも書きましたが、現象面だけでなく、国の成り立ちに遡って、思考や
行動を剔出されるからだと思います。

なるほどと、目から鱗が落ちる指摘もいくつもありました。

二つの覇権国だけでなく、基本的に外国は、「不愉快な隣人たち」ともいえますが、
これからの日本は、そのような隣人たちと付き合っていかざるをえません。

その際、相手を知って対応することが、ますます、求められるかもしれないですね。
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