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2024年02月23日15:05

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読書日記N o.1596(歯応え十分過ぎ、小林秀雄論)

■苅部直「小林秀雄の謎を解く」2023年10月新潮選書

副題は、”「考えるヒント」の精神史”。

出版物のパッケージとして、単行本、文庫、新書などの種別があることは、マイミク
の皆さんならご存知だと思いますが、選書、という種別はご存知でしょうか。

新潮選書、角川選書、朝日選書などがあって、新書より、内容を一層詳しくして、
判型と厚みを増したシリーズものです。

私の道楽読書では、お手軽な新書はよく手に取りますが、選書となると、お気楽に
読むことはできないので、面白そうだなと思ってもパスすることが多いです。

まぁ、でも、たまには、と思って本書を手に取ってみました。

テーマの小林秀雄も、特別に親しんだわけではありませんが、1960年代の大学入試
の国語の論説文の題材としてよく取り上げられていたことがあって、私が大学受験を
したのは、1970年代ですが、余韻があって、読んだ記憶があります。

私が学生時代によく読んだ、坂口安吾のエッセイに、「教祖の文学」という小林秀雄論
があって、教祖のような小林秀雄にも、駅のプラットフォームを踏み外す、可愛げが
ある、というような文章も記憶に残っています。

ただ、本書は、歯応えがありすぎで、十分に咀嚼できたとは言い難い本でした。
まぁでも、偶には、修行のように本を読むのもいいかなと、耐えて読み終えた次第です。

昔読んだ、山本夏彦さんのエッセイに、次のような記述がありました。

”昭和52年初版五千円もする小林秀雄の「本居宣長」は十万部以上も売れたそうです。
売れたからといって読まれたとは限りません。なぜこんなことがあるのでしょう、
小林さんは生き神様になったのです。さわらぬ神にたたりなしと言いますから、分か
らないと誰も言うものがいなくなったのです。”(山本夏彦「世は〆切」34頁)

遅ればせながら、本書の惹句を紹介します。

”代表作『本居宣長』へと至る、大いなる「思考の冒険」とは?気楽な随筆に見えた
雑誌連載『考えるヒント』は、実は徳川思想史探究の跳躍板だった。モーツァルト
やベルクソンを論じていた批評家が、伊藤仁斎や荻生徂徠らに傾倒したのはなぜか。”

”その過程で突き当たった「歴史の穴」とは。ベストセラーを読み直し、人間の知の
根源をも探る試みであったことを明らかにする、超刺激的論考。”

目次と小見出しの抜粋も紹介します。

■序章 『考えるヒント』について考える
・教科書の小林秀雄
・センター試験と「歴史」
■第1章 書物の運命
・「考えるヒント」への視線
・徳川思想史の試み
■第2章 科学から歴史へ
・伊藤仁斎とエドガー・アラン・ポオ
・大衆社会と「伝統」
■第3章 徳川思想史の方へ
・モオツァルトはお好き
・丸山眞男との対決
■第4章 歴史は甦る
・1940年の本居宣長
・「思ひ出」としての歴史
■第5章 伝統と近代
・「近代化」をめぐって
・愉しい学問

私の読書日記は、読み終えた本しか取り上げませんので、本書も総ページ300頁
ほどですが、ふうふう言いながら、最終ページまで辿り着きました。

最近、余り使っていない頭を使って、血の巡りが少しよくなったかもしれませんが、
やはり、道楽読書というのには、少し無理があったのかもしれません。(とほほ)

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