北浦寛之「東京タワーとテレビ草創期の物語」2023年11月ちくま新書
タイトルになぜか惹かれて、手に取った本を読了しました。
東京タワーができたのは、昭和33年(1958年)ですが、正式な名称は、日本電波塔
というのだそうですね。
そのあたりから、現在の上皇ご夫婦の結婚を期に、テレビは急速に日本社会に普及し、
当時、最盛期だった映画から、娯楽の座を奪いました。
本書はその当時の、テレビ草創期に、凋落する映画業界との対比するドラマが、テレビ
で放映され、その物語が紡がれていました。
長らく娯楽の王だったテレビも、ネット社会になった令和の世では、凋落が激しい
ですね。
10代、20代の若者は、もうほとんどテレビを観ないと言いますし。テレビっ子である
我々老人世代も、どうも興味を惹かない番組が増えている気がします。
栄枯盛衰は世の常といいますが、子供の頃から馴染んで、あれだけ輝いていたテレビが
こんなに凋落するとは、想像もしていませんでした。
ただ、年末だからこを、越し方行く末の思いを馳せたかったのかもしれないですね。
惹句を紹介します。
”「史上最大の電波塔」が誕生し、映画産業を追い越そうとした時代――東京タワーと
歴史的作品『マンモスタワー』をめぐる若きテレビ産業の奮闘。”
”東京のシンボルとして親しまれ、数多くの映画やドラマ作品に映し出されてきた東京
タワー。本書は、東京タワーが登場する現存最古のテレビドラマ『マンモスタワー』
をめぐる若きテレビ産業の奮闘に迫る。”
”この番組が放送された一九五八年は、映画産業が観客数の最高を記録した絶頂期で
ある一方で、東京タワーが「史上最大の電波塔」として竣工した年でもあった。
映像メディアの主役が映画からテレビへと転換していく時代において、その緊張関係を
象徴する『マンモスタワー』のユニークな魅力を気鋭のメディア研究者が描き出す。”
目次も紹介します。
序章 東京タワーと映像メディア
第1部 テレビ時代の到来(東京タワーの建設とその背景;テレビ時代を導いた人、
正力松太郎;初期テレビドラマの困難と成長;映画とテレビの競合)
第2部 『マンモスタワー』の制作・内容(ドラマ誕生の背景;映画会社にはびこる
因襲と矛盾―『マンモスタワー』考(一)
テレビという怪物―『マンモスタワー』考(二))
終章 変わりゆく映画、テレビ、そして東京タワー
読後感は、時代は滔々と流れ、人の世は、常ならぬもの(無常)であるということ
を痛感した次第です。
去年今年(こぞことし)貫く棒の如きもの 高浜虚子
時代は無常に流れます。
今年の読書日記はこれでおしまいです。
皆さま、よいお年を!
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