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2023年11月05日11:00

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「福田美蘭～美術ってなに？」/名古屋市美術館②

(続き)

◆「時代をみる」
福田美蘭は、「時代を映すことが美術の役割」と語る。
同時代の社会が抱える問題や、世界に大きな影響を与えた事件、出来事、美術もこうした物事と無縁ではいられない。

・《貿易センタービルの展望台》2008年/富山県美術館蔵

福田は撮りためた過去の写真の中から、2001年9/11のテロで航空機に激突されたビルの展望台で写したものを見つけた。ここから見るニューヨークの街の景観が好きだったが、もはや叶わない。
美蘭はその記憶を残す事にした。

・《秋 ― 悲母観音》2012年/東京藝術大学蔵
明治初期の日本画家狩野芳崖の絶筆《悲母観音》もやはり東京藝大が所蔵している。
人類の母たる観音菩薩は、子宮の中から生まれ出ようとするみどり子に、生命の霊水を静かに注ぐ。

・2012年12/4付けレポート「文芸大聴講〈芸術特論D〉⑩～狩野芳崖とフェノロサ」参。
https://mixi.jp/view_diary.pl?id=1883383486&owner_id=3341406

美蘭の悲母観音は、2011年3/11にこの世に現れ、幼子を優しく胸に抱きあげている。

2枚目のクローズアップ画面でわかるように、下界の海には壊れた家々や船が流されながら浮かんでいる。

ただ、タイトルの「秋」が何処からきたのかは分からないのだが。

・《石庭》2017年/千葉市美術館蔵

京都･龍安寺の平穏な石庭を細密描写した絵かと思い行き過ぎようとするが、そうではなかった。
手前にあるのは尖閣諸島である。
我々の心は、それを知ったとたんに落ち着きを、静けさを失ってしまう。

・《ゼレンスキー大統領》2022年/練馬区立美術館蔵
作品画像は前頁の新聞記事中にある。
美蘭はエドゥアール･マネの手法でペインティングを試みた。マネの目はいつも冷静で、感情に揺り動かされない。

・《プーチン大統領の肖像》2023年/作家蔵

名古屋市美術館はアメデオ･モディリアーニが描いた肖像画も持っている。それを見て、美蘭は今年4点のプーチン像を描き下ろした。
いつも感情を露わにいないプーチン、その眼はモディリアーニがよく使った手法で、青色に塗りつぶされている。この眼で彼は一体何を見ているのだろうか。

ゼレンスキーとプーチン両大統領の肖像画は、最後のコーナーに隣り合って展示されている。
2022年2/24以来、我々は毎日のようにTV画面を通じてこの顔を見ている。
彼等の言葉や表情から、我々は真実を見出さなければならない。

最後に《松竹梅》2017年/千葉市美術館
作品画像は前頁冒頭のポスターにある。
鰻重は特上から並み迄、実際は価格差が随分あるのだが、それを「松」「竹」「梅」と表現する。これは日本人の美意識からくるのだろうか？
これを展覧会のメインヴィジュアルに使う、それもまた美蘭の美意識か？
背景の水玉模様は、鰻屋の亭主が使う手ぬぐいのオーソドックスなものと考えればいいだろうか？(笑)
　

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