サンキュータツオ「これやこの」2023年8月角川文庫
本日、69回目の誕生日を迎えました。
古希の前祝いといきたいところですが、身体の賞味期限があちこちできていて、
日々、リハビリを兼ねた生活をしている今日この頃です。
近所に住んで、よく遊びに来てくれる小学生の孫娘たちが、我が家のリビングの
大きなカレンダーの本日欄に、「じいじのたんじょうび」といつのまにか書いて
くれていたのが、なにより、うれしかったです。
本日は、孫娘たちの運動会でもあり、この後、観覧に行きます。
さて、本書ですが、先日、書店に行って何か文庫本でも買おうと思ったら、手に
吸い付いてきた本でした。「読んで、読んでって」。
著者のサンキュータツオさんは、「学者芸人」というふれ込みで、朝日新聞の書評欄
を担当したこともあり、知っていたことと、20篇の随筆、すべて、故人との「別れ」
を綴った本だったので、瞬間的に読みたいとおもいました。
読み終えて、本書と縁があって読み終えることができ、よかったです。
著者は文章も上手いですが、故人への愛情とリスペクトが根底にあることが、濃厚に
感じられて、著者とともに、私が知らない故人を追悼する気持ちになりました。
本書の惹句を紹介しますね。
”「記憶を語り継ぐことだけが、師匠たちを死なせない唯一の方法だ――」”
”学者で漫才師(米粒写経)のサンキュータツオによる、初めての随筆集。著者本人の
人生をたどり、幼少時から今までの「別れ」をテーマに綴った傑作選。キュレーション
を務める「渋谷らくご」でお世話になった喜多八、左談次の闘病と最期、小学生の頃
に亡くなった父との思い出、そして京都アニメーションの事件で生きる気力を失った
サンキュータツオ自身の絶望と再生……。”
”自分の心の奥に深く踏み込み、向き合い、そのときどう感じたのか、今何を思うのか
を率直に描き出す。これまで「学問×エンタメ」を書いてきた著者の新境地!”
目次を抜粋して紹介します。
・「これやこの」…渋谷らくごを引っ張ってくれた喜多八、左談次二人の師匠
・「幕を上げる背中」…米粒写経として駆け出しの頃を支えたライブスタッフ
・「黒い店」…上野御徒町の古本屋「上野文庫」の店主と大学生だった自分
・「バラバラ」…「早稲田文学」で出会った作家・向井豊昭さん
・「時計の針」…大人になった今思い出す、中学校教師の話
・「明治の男と大正の女」…祖父母にしかわからない二人の話
・「空を見ていた」…仲良しだったいとこが残した一枚の写真
・「鈍色の夏」…2019年夏、生きる気力を失った自分を助け
本書は、20篇のエッセイ集ですが、特に、その半分近くを占める”長編”の
「これやこの」が絶品でした。
これやこの、とは、有名な蝉丸の以下の歌ですよね。
・これやこの行くも帰るも別れては しるもしらぬも逢坂の関 蝉丸
東京に定席の寄席は、新宿、池袋、浅草、上野にありますが、大きな駅で渋谷にはあり
ません。そこで、2014年から落語会を開催するキュレーターの役目を請けて、
柳家喜多八、と、立川左團次を立てましたが、二人とも、癌に罹患して亡くなりました。
そのいきさつが、二人の落語家および、落語へのリスペクトとともに、熱く語られます。
著者は、1976年生まれで、早稲田大学の落研育ち。落語への愛や、落語家へ向ける眼差
しは、半端なく、とてもいいものを読ませてもらったという印象でした。
最近、読書の調子が出なくて、リハビリもしていましたが、また、通常のリズムに戻れ
そうな予感もしています。
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