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2023年06月16日21:08

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【読書】 最近読んだ本 備忘禄

最近読んだ本の、備忘的メモ。

●「古墳とはなにか」 (松木武彦著、角川ソフィア文庫)

認知考古学という視点から古代を見るという本である。そもそも古墳とはどのようにして現れてきたのか、それがどのように変化して行ったのかを詳しく述べている。世界を見ても、前方後円墳のような独特な巨大古墳は、日本列島以外にはほとんど見られない。それは長をまつる巨大な墳丘を見上げることであり、神格化するものであった。そして、墓をともにする単位は、親族集団から個人や兄弟へと分裂していく。そこには社会不安と気候変動が背景にあるのだという。神格化の装置から単なる墓へとなっていき、やがて古墳文化は消滅する。全国各地に大小さまざまな古墳が残っているが、そこに眠る人やその時の世の中の様子を想像すると、また楽しいものである。


●「歴史のダイヤグラム<2号車>」 (原武史著、朝日新書)

以前「歴史のダイヤグラム」を読んだが、新聞への連載は続いているようで、今回は「2号車」である。著者の専門である政治思想史に絡めて、天皇家と鉄道に関する話を最初にまとめている。面白いのは、外国の一部権力者は自身の思うままに列車を動かし、ダイヤグラムも何もあったものではないが、日本では天皇の御召列車といえども、予め決められた時刻通りに動くということだ。他に政治家、実業家、作家、スポーツ選手の鉄道に関するエピソードを述べたり、個人的な思い出に関する内容もあったりして面白い。著者とはほぼ同年代なので、幼少期や学生時代の話など、同じ鉄道ファンとして妙に通じるものがあったりする。


●「降福からの道」 (井上道義著、三修社)

井上道義が指揮する演奏会は時々行くが、演奏の合間にトークを加えることがあり、一瞬よく意味が分からないような独特の言い回しながら、実はなかなか奥が深い話をしているという印象である。この本も、井上道義がいろいろな所に書いてきたエッセイを1冊にまとめたもので、内容もまさに演奏会でのトークのようである。その根底にあるのは、もちろん音楽に対する深い愛と、指揮者としての視点であり、読みながら十分に楽しめた。「過去でも未来でもなく、常に新しい今を愛して生きよう」という言葉が、井上道義らしい。


●「仮面ライダー昆虫記」 (稲垣栄洋著、東京書籍)

最初の放送が始まってから、今もシリーズが続いている「仮面ライダー」。そもそも仮面ライダーはトノサマバッタをモチーフにした改造人間なのだが、以降の仮面ライダーも、何かしらの昆虫をモチーフしているのである。そして、なぜその昆虫なのかを考えると、これが実にうまい設定なのである。バッタの驚異的な跳躍力は、そのままライダージャンプやライダーキックである。そして初期シリーズでショッカーが送り出した怪人は、蜘蛛、蝙蝠、サソリ、カマキリ、カメレオンなど、昆虫を食う生物ばかりだ。全く合点がいく。トンボをモチーフにしたV3は、脚力こそ1号、2号に劣るものの、さまざまな空中技が得意だ。以降の「仮面ライダー」シリーズは、ほとんど見ていないので詳しくないが、モチーフとなった昆虫を考えると、なるほどと思うものばかりのようだ。この本は自然科学書フロアの生物学の棚にあったのだが、まさに仮面ライダーを昆虫学的に考察した本なのである。


●「縄文人の死生観」 (山田康弘著、角川ソフィア文庫)

縄文時代の墓制論・社会論を専門とする著者による、縄文時代の生と死の考古学の本である。発掘された縄文時代の墓を詳しく調べることで、土器に納められた生後間もない赤ちゃんの遺体、妊娠線が刻まれた臨月の女性土偶、合葬された親子、顔に犬を乗せて埋葬された女性など、そこには精いっぱいの生を送り、病気や死の恐怖と戦った人々の様子が見てとれるのだという。自然や母胎への回帰と再生をめぐる縄文人の死生観が浮かび上がってくるのだ。遺跡から発掘された人骨は、かくも雄弁に当時の姿を物語る。そして、これらは現代人の死生観とは決して別物ではないことも分かるのである。
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