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2023年04月09日22:04

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【音楽】 ステーンハンマルとショパン ~和田記代サロンコンサート

今日の夕方は府中に行った。スウェーデンから一時帰国している和田記代さんの演奏を聴きにいくためだ。「ステーンハンマルとショパン」と題する演奏会で、プログラムは次のとおりである。

 ・ステーンハンマル:三つの幻想曲
 ・ショパン:レント・コン・グラン・エスプレッショーネ
 ・ショパン:マズル 嬰ハ短調 作品6−2
 ・ショパン:マズルカ ヘ短調 作品7-3
 ・ステーンハンマル:三つのピアノ小品
 ・ショパン:バラード第2番
 ・ショパン:12の練習曲 作品10

   ピアノ:和田記代
   会場:ミュージックサロン・サングレース (16:00 開演)

COVID-19の影響もあり久しぶりのサロンコンサートなのだが、演奏会場に行くと見知った顔もいて、すぐにいつもの雰囲気になる。今日は標題のとおり、ステーンハンマルとショパンのピアノ作品のプログラムである。和田さんのステーンハンマル演奏はお馴染みであるが、ショパンは意外と珍しいかもしれない。もちろん、ただ作品を並べただけではなく、両作曲家の関係などの説明トークを交えながらの演奏会で、いろいろ新しいことに気付かせてくれるのである。

ステーンハンマルとショパンは作風が似ているわけではない。ただ共通点として、スウェーデンとポーランドという、ヨーロッパの音楽の中心からみれば辺境の国の出身であること、作曲は完全に独学という訳ではないにしろ、音楽学校ではピアノを学んだこと、そして番号以外に標題を付けた作品が少ないことなどがあり、違いとしては、ショパンはピアノ作品に特化していくのに対し、ステーンハンマルは、作曲家としてはピアノは必ずしもメインではなくなっていったことなどがある。こういった説明のあとで演奏会が始まった。

ステーンハンマルの「三つの幻想曲」は、お馴染みの名曲。和田さんの演奏でも何度か聴いていると思う。第1曲の冒頭の音が勢いよく響くと、ステーンハンマルの音楽の世界に浸っていく。続いてはショパンの「レント・コン・グラン・エスプレッショーネ」である。「遺作のノクターン 嬰ハ短調」と言った方が分かりやすいかもしれない。メランコリックな雰囲気がまた素敵である。

和田さんのトークによると、ステーンハンマルは自宅でショパンのマズルカをよく弾いていたらしい。何番を弾いていたのかの記録がある訳ではないか、ただスウェーデンの収集家のところに自筆譜があるものがあり、ショパンのマズルカは今日演奏する2曲の自筆譜がスウェーデンにあるそうだ。そういう貴重な自筆譜を実際に見ると、出版された楽譜からは見えない発見があることも多いようで、今日はその自筆譜を研究しての演奏である。私は、ショパンのマズルカは、作品番号を聴いてもすぐにどんな曲かが浮かぶほどは詳しくないのだが、聴けばマズルカだとはよく分かる。独特のリズムに身体も動いてしまいそうである。

スウェーデン語でポーランドを意味するポルスカ。そのポルスカを含む3曲からなるステーンハンマルの「三つのピアノ小品」が続くが、ショパンのマズルカを好んで弾いていて、そこからインスピレーションを得たのだなということが、なんとなく感じられるような演奏であった。

またまた和田さんのトーク。ショパンもステーンハンマルも、作品には「歌」がある。ただし、ショパンの歌はソロ、ステーンハンマルの歌は合唱のイメージなのだという。なるほどである。そして、「ショパンのバラード第2番」で前半を締める。実はこの曲もステーンハンマルがピアニストとして演奏した記録があるそうだが、和田さんの言うには、ステーンハンマルがショパンのバラードを演奏するとすれば、やはり第2番だろうということ。そう言われても、私にはすぐにはピンとこないのであるが、あとでショパンのバラードを一通り聴いて確認してみようと思う。

後半はショパンの「12の練習曲 作品10」である。有名な「別れの曲」、「黒鍵」、「革命」などを含む12曲だが、もちろんこれらの標題はショパンが付けたものではない。12曲をほぼ切れ目なく続けて演奏することで、各曲がバラバラにあるのではなく、つながりを持っていることも感じることが出来るのである。

これで今日のプログラムは全て終了したが、アンコールはやはりステーンハンマル。先日91歳でなくなったピアニスト、イレーヌ・マンヘイメルは、和田さんへも大きな影響を与えた方だという。ステーンハンマルのピアノ協奏曲第1番の初録音をして、この曲の存在を世に知らしめた方でもある。その録音は今でも聴くことができるが、その曲に続けてCDに収録されているのが「晩夏の夜」である。これもステーンハンマルの名作であり、和田さんの演奏でも何度か聴いているが、今日もそこから第1曲を弾いてくれた。イレーヌ・マンヘイメルの追悼の思いも込められているような、演奏であった。

これで終わるはずだったが、追加でアンコールのリクエストがあり、客席にいたスウェーデン在住のソプラノの江藤育美さんが急遽指名されて、和田さんの伴奏でステーンハンマルの歌曲「I skogen (森の中で)」を歌った。「急に無茶ぶりされた」とは思えないほど素晴らしく、最後も大いに盛り上がった。

これで本日の演奏会は全て終了である。久しぶりの再会ということもあり、結局「いつもの人たち」が、このあとも1時間近く残って、和田さんを囲んで「濃い話」をして盛り上がった。
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