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2023年03月25日20:08

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【音楽】 オーケストラ・ニッポニカ演奏会 @紀尾井ホール

今日の午後は四ッ谷に行った。オーケストラ・ニッポニカの演奏会に行くためだ。
プログラムは次のとおりである。

 ・山田耕筰:交響詩「曼陀羅の華」
 ・永冨正之:一楽章の交響曲
 ・武満徹:冬
 ・石井眞木:雅霊
 ・野平一郎:言葉にならない世界へ

   指揮:野平一郎
   会場:紀尾井ホール (14:30 開演)

オーケストラ・ニッポニカ設立20周年記念連続演奏会として、昨年から3回シリーズで行われている演奏会の最終回である。もちろん、第1回も第2回も行っている。今日のプログラムは未知の作品が多い。CDを持っていて聴いているのは山田耕筰の「曼陀羅の華」のみで、あとは全くの初である。それもそのはずで、永富の交響曲は日本初演、野平の作品は本日の演奏会のためのオーケストラ・ニッポニカによる委嘱作品で、今日が世界初演である。

唯一知っている「曼陀羅の華」から演奏が始まる。この曲は山田の友人齋藤佳三が、父の訃に接した際に綴り出された詩に寄せる曲ということである。曼陀羅華は天上に咲き、見る者に悦びを与えるとされる花だったと思う。そんな気持ちで聴いていると、友人の父が、美しい曼荼羅華に包まれた極楽で穏やかにいることを思うような、そんな感じが伝わってくるのである。ハープがなかなか効果的に使われているようだった。

続いては、永冨の交響曲だ。タイトルのとおり一楽章だけの交響曲である。半世紀以上も前に作られた日本人作曲家の作品が、今まで日本国内で演奏されなかったのも不思議だが、こういう埋もれた作品は多いのだろう。聴いてみると、今日初めて聴いたということもあるが、私にとっては晦渋な作品であった。冒頭の、どこか遠くから静かに何かが浮かび上がってきて、やがて大きくはっきりとしてくるような感じはなかなか面白かったが、そこから緩急さまざまに展開し、気が付けば終わっていたという感じで、機会があればまだじっくりと聴いてみたいとは思う。

休憩のあとは、指揮者の野平氏のトークから始まった。20周年を迎えたオーケストラの団員への労いから始まり、このあと演奏する作品の簡単な解説を行った。独特の響きを追求した武満作品、偶然性も取り入れた石井作品、そして自身の作品については、「ここで説明するのはやめましょう。白紙の状態で聴いて下さい」ということである。

さて、後半の最初は武満の「冬」だ。前半の2作品とは全く雰囲気が違う。メロディーらしいメロディーもほとんどなく、打楽器も多用した独特の響きが続いていく。冬というよりは、どこか不思議な世界に入り込んでしまったかのようだ。武満の作品は、他のどの作曲家の作品にもない独特の雰囲気があって、以前は正直苦手なところも多かったのだが、聴く機会も増えてきて、最近は楽しめるようになってきたと思う。

続いては石井の「雅霊」だが、このタイトルから想像したような音楽とは全く違った始まりで、ぶったまげてしまった。各楽器が一斉に大音量で好き勝手に演奏しているかのようなカオス状態から始まる。この間は指揮者も棒を止めて、本当に各奏者が「勝手に」演奏しているのだ。この混沌が、また不思議な感覚になる。「融合する音集合」ではなく「個の音集合」なのだそうだが、プログラムの解説を読んでも分からない。でも、聴けばこういうことかと分かる。かと思うと、途中でフルート独奏による美しいメロディーが現れ、これにヴァイオリン独奏などが追いかけていき、なかなかいい感じだ。そして、このあとでまた冒頭のようなカオスが登場するのである。なかなか凄まじい音楽であった。

最後は、野平の「言葉にならない世界へ」だ。作曲者自身の指揮での演奏ということになる。未分化な世界、原風景、創世記の世界、言葉という表現手段をまだ持たない時代、そんなところをイメージした作品とのことである。そもそも音楽で表現するということは、言葉では表現できないものがある訳で、そんな思いもあるようだ。マラカスが静かに鳴ったあと、ハープやピアノが入っていって曲が始まる。冒頭から今まで聴いたことがないような音楽だ。そのあともなんだか行方が定まらないような、なんとも捉え難いような音楽が展開するが、これこそが作曲者の意図したところだろう。プログラムの解説にあるように「言葉で説明し理解するのではなく、音響の推移に身を委ねて聴く」のが正しいのだ。言葉にならない世界なのだから。

初めて聴く作品ばかりで、充実した演奏会であった。3回にわたる演奏会で、日本人作曲家の作品の奥深さも改めて認識できたと思う。取り上げた作品も必ずしもその作曲家や時代の代表作ではなく、「ちょっと横道にそれた作品」が多かったのも、むしろ良かったと思う。
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