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2022年12月03日23:41

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【音楽】 オーケストラ・トリプティーク演奏会〜幻の交響作品と新たな創造

今日の夜は、久しぶりに中野に行った。オーケストラ・トリプティークの演奏会である。
プログラムは次のとおりである。

 ・黛敏郎:パッサカリア (未完)
 ・日本国歌「君が代」 (黛敏郎による管弦楽編曲)
 ・芥川也寸志:GX CONCERTO
 ・三木稔:交響曲「除夜」
 ・水野修孝:交響曲第5番
 ・鹿野草平:よみがえる大地への前奏曲

   指揮:野村英利/エレクトーン:竹蓋彩花
   会場:なかのZEROホール (19:00 開演)

オーケストラ・トリプティークの演奏会だからマニアックなプログラムになるのは当然だが、特に今日は「幻の交響作品と新たな創造」と題する演奏会だけあって、「幻の作品」のオンパレードだ。もっとも、いつまでも「幻」にしておくのではなく、普通に演奏されることを願っているのであり、埋もれていただけで実は素晴らしい作品を取り上げているのは言うまでもない。私自身もいずれも聴くのは初めてだ。正確にいえば黛の2作品のみはピアノ編曲で聴いたことがあるが、管弦楽での演奏は初めてである。

最初は黛の「パッサカリア」から始まる。これは黛の絶筆である。ベートーヴェンやらモーツァルトやらが現れるのだが、その箇所はヴァイオリン・ソロが弾くのだということを知った。これはピアノ版では分からない。オーケストラが演奏している中、コンマスが一人で遊んでいるような(?)感じで、混沌としつつも何か面白く展開していきそうだ、というところでパタッと止まってしまう。未完の作品なのである。「君が代」は黛がオーケストラ版に編曲したものである。雅楽的な響きが作り出されており、日本人の心に響くような音を黛が追求したものといえるかもしれない。

続いては、芥川のGX CONCERTOだが、タイトルにあるGXというのは、ヤマハのエレクトーンの機種GX-1のことだそうで、1975年当時の最新鋭機種のエレクトーンのために、ヤマハが依頼して出来た曲ということである。いわば、ヤマハのエレクトーンの大掛かりなコマーシャル音楽(?)ともいえるのだ。この機種は今はもうないので、現在の最高機種EL-02Xを使っての演奏である。曲はアレグロ・オスティナートの芥川節全開で、エレクトーンも様々に音色を変化しつつ、オーケストラと絡んでいく。実は楽譜には最低限しか書かれていず、音色やエフェクトなどは奏者に委ねられるらしい。すなわち、同じ曲を別の人が演奏したら違った表情になるという、一期一会の演奏ともいえるのだ。途中エレクトーンだけで演奏される箇所があるが、目をつぶって聴いているとオーケストラが演奏しているようにも聞こえる。打楽器のような音を出す箇所もあるし、エレクトーンの可能性を十分に弾き出した画期的な作品だったのだろう。実に素晴らしい。このあと10分間の休憩になったが、その間この曲のメロディーが耳から離れなかった。

続いては、三木の「除夜」だ。ここ曲の前に休憩が入ったのはセッティングに時間がかかるからだろう。ピアノ2台、テナートロンボーン4本、チューバ2本、ティンパニ6台と、なんかすごいことになっているが、これがこの曲の根底の響きを支えるのである。作曲されたのは1960年だが、なんと今日が世界初演である。60年以上も演奏されなかったのは、もともとコンクールに応募した作品なのだが、編成が規定を逸脱しているとして受け付けられず、以降そのままになっていたものらしい。なんで規定外の編成で応募したのかと思うが、三木の求める音を追求したらこうなっただけで、コンクールの応募規定なんて、どうでもいいことだということらしい。曲は祈るように始まり、その後さまざまに展開していくが、その中で鐘の音が続けて鳴っている。数えていないが、108回鳴ったのだろうか。聴いているうちに煩悩が一つずつなくなって、最後はすっきりとした気分になれるような気がするのは、まさに「除夜」という曲らしい。これも素晴らしい作品だ。

ここで2回目の休憩があり、そのあとは水野の交響曲第5番である。この曲も世界初演であるが、こちらは埋もれていた作品ではなく、オーケストラ・トリプティークとスリーシェルズの委嘱で作曲されて、今年8月に完成したばかりの作品である。4楽章構成の交響曲で、一つ一つの楽章はそれほど演奏時間は長くなく、トータルで20分くらいの曲だが、これがまた実に凄まじいのである。大トゥッティで曲が始まると、まもなく大音響が炸裂、これでもかとホール中に鳴り響く。そうかと思うと、第2楽章は落ち着いたゆったりとした感じで流れ、第3楽章は優しいメロディーで始まり、どこか懐かしいような雰囲気さえ感じた。しかし、油断していると第4楽章では第1楽章以上に超大音響が爆発。これぞ水野節である。水野氏は現在88歳であるが、演奏終了後に会場からステージ上に呼ばれて挨拶した。88歳でこんなに元気とは!

その水野の約半分の年齢の鹿野の作品で最後は締める。作曲されたのは2011年で、「よみがえる大地への前奏曲」というタイトルと作曲年から分かるように、東日本大震災からの復興を願う意味を込めて作られた曲であるとのことだ。穏やかな雰囲気で始まり、途中から力強くなっていくような曲で、前向きな気分になることを願って作られたというのもよく伝わる曲だ。この曲も演奏終了後に作曲した鹿野氏がステージ上に呼ばれた。88歳の水野氏はゆっくりと歩いていったが、42歳の鹿野氏は、さっと小走りに行って飛び上がってステージに上り、若さをアピール(?)していた。

現役作曲家は2人とも、会場からは大きな拍手を受けていたが、「幻の作品」だけでなく「新たな創造」の方も素晴らしかったのである。今日聴いた作品は、このあと聴く機会があるのか分からない作品もありそうで、貴重な演奏会だったと思う。(でも、録音していたようだから、CDになるのかな?)
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