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2022年05月25日20:15

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【読書】 最近読んだ本 備忘録

最近読んだ本の、備忘的メモ。

●「お皿の上の生物学」 (小倉明彦著、角川ソフィア文庫)

面白い講義を聴いているような本だと思ったら、大阪大学理学部における新入生向けの基礎セミナーの講義録がもとになっているのだ。身近な食材や料理をもとに、生物学的視点からいろいろと面白い話を展開している。味の話では有名な池田菊苗の旨味の話も登場、色の話では青や赤や緑の食材、それがどういう分子構造から出てくるのか、香りの話では珈琲やワインの香りのメカニズム、そして料理の温度の話へと及ぶ。赤身魚と白身魚の切り方の違いには理由があるし、食器にも意味がある。クリスマスにローストチキンやケーキを食べる理由が説明され、豆の話ではアジアの大豆とヨーロッパの豌豆の話、もちろんメンデルの遺伝学の話も登場する。「新入生の五月病を撃退した講義」だそうだが、それもよく分かる気がする。


●「ウルトラ音楽術」 (冬木透/青山通著、インターナショナル新書)

冬木透氏に青山通氏がインタビューする形で書かれた、冬木透の音楽体験や音楽観などの本である。幼少期にレコードで聴いて衝撃を受けたワーグナーや、満州から本土に引き上げて接したラジオのクラシック音楽などから音楽家を志すようになり、エリザベト音楽短大で本格的に学ぶ。TBSに入社してしばらくして「ウルトラセブン」に関わるわけだが、決して安直な子供向け音楽にはしなかったという。それは今聴いても分かる。冬木の作曲のルーツはクラシック音楽なのである。本名の蒔田尚昊名義で作曲したクラシック系の作品や、好きな作曲家・指揮者などにも話は及ぶ。冬木透は「ウルトラセブン」だけの作曲家ではないのだ。


●「呪護」 (今野敏著、角川文庫)

高校の校内で、男子生徒が教師を刺したという事件が発生した。教師が女子生徒に淫らな行為をしているところ偶然見つけ、ついカッとなって刺したという。しかし、その女子生徒の言うことには耳を疑いたくなるような事実があった。それは淫行などではなく、法力を得るための儀式であるという。捜査を進める中で、少年事件課の富野は祓師の鬼龍光一と安部孝景とも再会する。事件の背景には東京に災害を呼び込もうとする真立川流と、それを阻止せんとする元妙道の戦いがあったのだ。実は加害少年は真立川流であり、警察の内部にも信者がいた。そして、ついに富野もトミ氏の末裔たる霊力を発揮する時が来た。警察小説に絡めたオカルト伝奇小説で、荒唐無稽な話といってしまえばそれまでだが、それを作り上げる今野氏はさすがである。


●「天然知能」 (郡司ペギオ幸夫著、講談社選書)

人工知能でも自然知能でもない、天然知能。この天然知能こそ人間が本来持つものなのであるという。人工知能は、自分に意味のあるものだけを認識する一人称的知性。自然知能は、自然科学が規定する三人称的知性。それに対して天然知能は、ただ世界を受け入れるだけの1.5人称的知性であるという。この天然知能について、マメコガネ−知覚できないが存在するもの、サワロサボテン−無意識という外部、イワシ−UFOはなぜ宇宙人の乗り物なのか、カブトムシ−努力する神経細胞、オオウツボカズラ−いい加減な進化、ヤマトシジミ−新しい実在論の向こう側、ライオン−決定論・局所性・自由意志、ふったち猫−ダサカッコワルイ天然知能、と進んで行く。書かれていることは難解でよく理解できないが面白い、という不思議な感覚。これこそ天然知能?


●「剣持麗子のワンナイト推理」 (新川帆立著、宝島社)

「元彼の遺言状」の続編ということになるのだろうか。弁護士の剣持麗子は、もともと企業関係の案件を専門にしていたが、亡くなった先輩弁護士の持っていた仕事を引き継ぎ、民間の案件も受け持つことになった。手間がかかるわりに金にはならない依頼ばかりだが仕方ない。それに、昼間は仕事が詰まっているので、夜間に対応するしかない。不可解な殺人事件、奇妙なバーのホストの存在。成行き上そのホストを助手として雇うことになるが、必ず事件の現場に絡んでいるようで、どうも怪しい。ホストが弁護士麗子に近づいた本当の理由が、やがて暴かれる。作者は弁護士でもあるため法律論には説得力がありそうだが、そこは小説的誇張もあるので実際の事件では本書を参考にしないこと、という注意事項があるのは前著と同じ。
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