最近購入したCD 3枚。
●イマンツ・カルニンシュ (1941- 、ラトビア)
・交響曲第4番
・チェロ協奏曲
アトヴァルス・ラクスティーガラ指揮 リエパーヤ交響楽団
アイヴァルス・メイイェルス (ベースギター)
ヴィルニス・クリエヴィンシュ (ドラム)
マルタ・スドラバ (チェロ) (2014年録音、Skani)
「ロック交響曲」の別名もあるカルニンシュの交響曲第4番。まさかこの曲の新録音が出るとは思っていなかったので、つい購入した。すでに聴いているラン・シュイ/シンガポール響盤と聴き比べができるが、ずいぶん印象が違って聞こえる。「ロック交響曲」たる所以の第1楽章のテンポがずっと遅く、ラン・シュイ盤の10分42秒に対し、これは14分37秒。ロックのノリノリな曲だ、で済まさず、じっくりと聴いてほしいという感じだ。第4楽章も、本来はソプラノ独唱が入るところがオーケストラのみで演奏される。これは、オリジナルのアメリカ人による詩を異文化圏で表現するのが難しかったということなのだろうか。マイナー曲なのに何度も聴いて耳に馴染んでいた曲が、かくも新鮮に聞こえるとは。併録のチェロ協奏曲は初めて聴くが、なんだか陰鬱な感じで、薄暗い町にたたずんでいるような感じである。チェロが美しく歌うなどという箇所が、全くといっていいほどないのだ。
●萩森英明 (1981- 、日本)
・沖縄交響歳時記
大友直人指揮 琉球交響楽団 (2019録音、RESPECT RECORD)
沖縄初のプロ・オーケストラである琉球交響楽団の委嘱により作曲された、沖縄伝統音楽をベースにした曲である。「新年」、「春」、「夏」、「秋」、「冬」、「カチャーシー」の6つの楽章からなり、文字通り沖縄の季節の移り変わりを表現したものである。琉球開闢神話に通じる祝賀曲「かぎやで風」のメロディーに始まり、沖縄の祭りや伝統行事の音楽が加わり、「谷茶前」、「エイサー」、「サーサー節」、「てぃんさぐぬ花」など、沖縄音楽を盛り込んだ音楽が季節毎に展開していく。第6楽章は、カチャーシーを踊って福を招き入れようという訳で、「アッチャメー小」、「多幸山」、「唐船ドーイ」が用いられ、にぎやかに曲を終える。
まさに沖縄のオーケストラならではの交響曲である。大友直人は、モーツァルトやベートーヴェンやブラームスといった誰でも知る名曲を演奏するのがオーケストラの本分であるという風潮に疑問を抱き、そのオーケストラならではの音楽を発信すべきと考え、生まれた曲である。そういえば、萩森英明の作品は、前に東京交響楽団の演奏会でも聴いた、新古今集からインスピレーションを得たという「おとづれわたる秋風を」が素敵な曲だったのを思い出した。
●松島彜 (1890-1985)
・弦楽四重奏曲 変ホ長調
●吉田隆子 (1910-1956)
・青年の歌
・弦楽三重奏曲「ソナチネ」
●渡鏡子 (1916-1974)
・ピアノ・ヴァイオリンとチェロのためのトリオ
●金井喜久子 (1906-1986)
・ピアノ五重奏曲
印田千裕弦楽四重奏団/高良仁美 (ピアノ) (2016録音、MITTENWALD)
「日本女性作曲家の歩みシリーズ」の第2集で、ほとんどが初めて聴く曲だが、それもそのはずで、吉田の「青年の歌」以外は、2016年のこのCDが世界初録音だ。印田姉弟と、その2人を核とする弦楽四重奏団は、このような埋もれてしまった邦人作曲家の作品を積極的に演奏している若手演奏家である。
松島つねは童謡の「おうま」や「あかいとりことり」以外はあまり知られていないが、女性作曲家のパイオニアといわれ、大正時代に作られたこの弦楽四重奏曲も、穏やかな曲想が素敵な作品である。吉田隆子は反戦運動で有名で、思想犯として四度も投獄されるなど、波乱万丈の生涯を送った。「青年の歌」は、別の録音でも聴いた唯一の曲だが、「手錠踊り」と「同志よ固く結べ」をモチーフにした二重奏である。三重奏曲は習作レベルと本人も言っていたそうだが、静けさの中に何かを感じさせるような、のちの作品につながるものがあるように思う。渡鏡子はチェコ音楽の研究者としては有名だが、作曲家としても作品を残している。この三重奏曲は、第1楽章と第3楽章のみで、第2楽章は欠損となっているが、その第3楽章がドヴォルザークのような雰囲気も感じられるのは、チェコ音楽研究者らしいといえようか。金井喜久子は沖縄音楽をベースにした作品を多く残しており、自身の作品のみならず、沖縄伝統音楽の伝播にも尽くした人で、この五重奏曲も沖縄情緒の雰囲気が散りばめられている。
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