最近に「フランク永井ヒット歌集」なるLPを入手した。フランク永井のLPは基本的にすべて手元にあるのだが、ジャケット写真が気になり、もしかして私の資料にない未発掘のものだろうかという期待もあった。収録曲に未発見があるという期待は端からなかったので、曲にも新発見は期待していなかった。ちょっと道楽としていかがなものか、と自分でも思いつつ購入したのだった。
ジャケット写真というのは、何年か前に当ブログで紹介したことがある「霧子のタンゴ」なる台湾版のLPだ。並べてみればデザインが同じ。この写真を使った日本版のLPは知らないので、もしかして元になった日本版のLPがあるのではないのかという思いもあり、確かめたかった。
製品を手にしてよく見たら、何とこれも台湾製だった。まあ、別の表現をすれば著作権違反の海賊版。いや、断言はしかねるのだが、怪しいには違いない。
収録されている曲は次の通り。
01_有楽町で逢いましょう
02_夜霧の第二国道
03_俺は淋しいんだ
04_淋しい街
05_誰よりも君を愛す
06_霧子のタンゴ
07_誰を愛して
08_こいさんのラブ・コール
09_林檎ッコ
10_アコちゃん
盤面にはLLP-107-高級豪華版 特殊録音 フランク永井ヒット歌集 品出社版片唱鳳龍
中国語は分からないが、版権は得ているのだよと読めそうな表記もある。版には60年2月出版と書かれている。えっ、このリリース年は西暦と判断するが、違うのだろうか。台湾は1949年に大陸が国家宣言。台湾に逃れた蒋介石がやはり中国を名乗るという経緯があったが、台湾独自の年号が採用されているというのは聴いたことがない。
年代を気にしたのは「誰を愛して」は1964年。「アコちゃん」は1965年のリリースだから、1960年2月にはまだ世に出ていないからだ。
この盤の裏面に歌詞が印刷されているが、ここに日本の流行歌を全8枚のLPでだしているのだ、という意味合いにとれる広告がでている。
美空ひばり3枚、春日八郎、三橋美智也、神戸一郎、フランク永井(当盤)、小林旭だ。なかなか楽しそうだ。曲名は日本語だけ、日本語と中国語だが、神戸一郎は中国語だけで、判読できない。
以前に紹介したもう一枚も見てみよう。どう見ても版元は同じに見受けられるのだが「ポパイ・レコード」といったように見える。PP-2058-最新立体録音決定版〜フランク永井傑作集〜で、ジャケットには「魅惑の低音フランク永井の傑作集〜霧子のタンゴ〜」、いつまでの心に懐かしいあの唄この唄、と記載されている。リリースは、60年5月とある。
01_有楽町で逢いましょう
02_霧子のタンゴ
03_羽田発7時50分
04_湯島の白梅
05_東京午前三時
06_真白き富士の嶺
07_誰よりも君を愛す
08_落葉しぐれ
09_夜霧の第二国道
10_俺は淋しいんだ
11_冷いキッス
12_東京カチート
この盤も怪しいのは上記と同じで「誰よりも君を愛す」「落葉しぐれ」は、1969年に「吉田メロディーを唄う」で初めて発表した曲。これが先の同様、正式なライセンス・レコード盤ならば、インチキを匂わす表記は不要なはず。
インチキ臭ければ臭いほど、そこに強烈な魅力があって売れるということで、次から次と臭さを編み出して売っていたのだろうか。てなことは、ないですね。
だが、当時レコード会社自身の外国資本との関係とかで海外に出すのは極めて困難だったようだ。基本的には許可はおりない。おのずと台湾や韓国では海賊版が作られる。密かに作ってはパッと売り切って逃げる。皆が忘れたころを狙って、また別の装いで同じことをやる。人気を知る人は、密かにそれを待ち、素早く購入して、楽しむという社会事情がうかがえる。
だから、日本の歌のうまい歌手は、誰も宣伝しなくても大衆の間にはまたたくまに広まる。これが、現在に至るまでフランク永井の人気を支えたベースになっている。台湾でのフランク永井人気は、たびたび紹介してきたことだが「捨てられた街」というのが大人気のようだ。
1959年の「魅惑の低音第3集」にだけ収録されている作品。清水みのる作詞、平川浪竜作曲の曲だがが、そのメロディーと「捨てられた名」という曲名が魅力になっているのだろう。前半の盤にもある「淋しい街」もそうだが、台湾は同じ中国でありながら、大国の思惑に翻弄された歴史を持つ。
そのようなちょっぴり悲しいイメージもあるが、明るい台湾では現在は堂々と各所で、フランク永井の残した曲を生き生きと演奏し、歌って、楽しんでいる。ある意味、日本以上で、うらやましくもある。
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