3/15(日)のNHK-Eテレ「クラシック音楽館」では、N響第1928回定期公演の収録が放送された。
べネズエラの新鋭ディエゴ･マテウスが指揮をした昨2019年12/6、NHKホールでの公演である。
プログラムは以下の通り。
・《夏の夜の夢》序曲Op.21 メンデルスゾーン
・ヴァイオリン協奏曲イ短調Op.82 グラズノフ
Vn；ニキータ･ボリソグレブスキー
・《幻想交響曲》Op.14 ベルリオーズ
前後は措いて、ここではグラズノフのヴァイオリン協奏曲について書こうと思う。
アレクサンドル･グラズノフ(1865-1936/ロシア)は8曲もの交響曲を含め多くの作品を遺した作曲家だが、現在、日本ではあまり演奏される機会がない。
以前TBSK管弦楽団によってバレエ音楽《四季》(1899-1900)を聴いた事があり、その時、彼について少しばかり書いた。
以下参考迄。
https://mixi.jp/view_diary.pl?id=1965194490&owner_id=3341406
1936年迄生きたが、作曲家として20世紀の音楽史には殆ど影響力を持たなかった。世紀末の時代は1910年頃迄のムーヴメントだが、このヴァイオリン協奏曲は1904年に書かれている。
1928年に出国(亡命とは言っていない)して、2度とソ連(当時)には戻らなかった。
このヴァイオリン協奏曲は3つの楽章を有するが、間断なく演奏され、20分程度。考えようによっては、3つの部分を持つ単一楽章曲と捉える事もできるだろう。
・第1楽章モデラート イ短調、自由なソナタ形式
・第2楽章カデンツァ アンダンテ･ソステヌート、緩徐楽章
・第3楽章アログロ イ長調、ロンド形式
このように、第2楽章を作曲者本人がカデンツァと名付けているから、全体を1つの楽章として捉え、カデンツァ付きの中間部と見るのもおかしくはない。
その第2楽章のヴィオラの低音メロディは木管に受け渡され、その上をヴァイオリンソロがオブリガート風に、音を細分して飾りながら進行する。
この楽章は転調が頻繁で、統一的な調性を言う事は難しい。
クラズノフはヴァイオリンを弾かなかったらしいが、本人作のカデンツァはソロの技巧表現の聴かせ所で、音色の多様性が際立っている。
カデンツァのあとトランペットのファンファーレで第3楽章に入る。
6/8拍子のアレグロは、頭の付点が軽快なリズムの狩猟音楽となっている。
時に2拍子系から3拍子系に行ったり来たりするのが民俗風で面白い。
ソロのピツィカートのリズム和音はバラライカをイメージしているらしい。
次第に激し、テンポアップと伴にクレッシェンドし、ヴァイオリンソロの急速な上行音形で突然終わる。
総じて後期ロマン派の様式音楽であり、20世紀で忘れられていくのも致し方ないか。
ソロのニキータ･ボリソグレブスキーはロシアの若手で既に立派な経歴を持っているようだ。
使用楽器はマッテオ･ゴフリラー(1659-1742/1720-30製作)。
低音に豊かさを感じたが、あとで調べると、ゴフリラーは殊にチェロで名器を遺したとの事。
アンコールにはヴィエニャフスキ―の《エチュード･カプリス》第4番Op.18で、これまた超絶技巧を披露した。
指揮のディエゴ･マテウスは1984年、ベネズエラ生れというから、今年36歳になるという計算。
ベネズエラの「エル･システマ」で育ったのは、先輩のグスターボ･ドゥダメルと同様。
クラウディオ･アバドに見出され、彼の下で学んだ。
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