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2019年12月22日11:00
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文芸大聴講「国際文化入門C」第12回〜続き、特にフェスについて
静岡文化芸術大学の授業「国際文化入門C」の聴講第12回目。
講師 石川清子
テーマ 先週の続き、特にフェスについて
フェスを更に詳しく見てみる。
旧市街に入る観光客は城壁西のブージュルード門から入る。これが謂わば正門。
2本のメイン通り(幅2m程)があり、その周囲にスーク(市場)が並んでいる。
同業種がひと固まりに集まっている。
収益は、同業種組合で分配する方式。したがって、客を取り合ったり、値段を下げ合ったりしない。店頭に価格表はなく、販売価格は客と店員との間で決められる。
この2本の通りを北東へ歩くと、旧市街の中心地カラウィーン・モスクに到着する。
商売人達は、南のジャディード門から車で入り(車道はこれ1本のみ)、ルシーフ広場で車を停め、荷物をロバやラバに乗せて店に運ぶ。
カラウィーン・モスクは、単に祈る場所であって、ヨーロッパに見られるような装飾はない。
街の中心はモスクだけでなく、商店や商人宿(フォンドゥク)もあり、聖俗混在している。
その西にはフェズ川が流れており、街は大きくその西と東に分かれている。西は、チュニジアのケルアーンからの移住者が住むケルアーン(カイラワーン)地区、東は、レコンキスタ以降イベリア半島から逃れてきたイスラーム達の住むアンダルース地区とに分かれている。
フェズ川の上流にはなめし革職人が住む地域があり、染料を入れた多くの壺が並ぶ。
強烈な臭いがするため、ツアー業者はハーブを観光客に渡し、それを鼻の穴の下にかざして紛らす。
カラウィーン・モスクの西側近くには「キサリア」という特別のスークがある。高級品の絹織物の店が並び、ここら一帯だけ屋根がある。フェスのデパートと言っても良い。
キサリアの西にはムーレイ・イドリス廟がある。
イスラームは個人崇拝をしないのが原則だが、モロッコはイスラームの中心地(メッカやバグダッド)から離れており、規則が緩やか。
9世紀にモロッコの都をフェスに置いたムーレイ・イドリス2世を祀っている。
特に女性が多く願掛けに通う。
道の結節点の所々に小さな広場がある。30畳程の狭いもの。
泉が中心にあり、体を洗い清め、休憩する。
メイン通りの内側は居住地で迷路のようになっている。
曲がりくねった狭い道、窓はない。
入口もはっきりせず、中庭への通路も曲がっていて、中を窺えない。
スペインのパティオ式住居は、同じ中庭式建築でも、門に花を飾ったり、通路を真っ直ぐにし、奥の美しい庭が見えるようにしている
この辺りは文化の違いだろう。
内部を人に晒さないというのがイスラーム風と言える。
道や家は居住者だけが分かれば良いという考え方。外部の者が入れない防御の仕組み。
奥に行く程立派な邸がある。
2階建てが普通で、屋上はテラス。
テラスは女性と子供の場。
洗濯物ゆ絨毯を干し、おしゃべりをし、息抜きをして楽しむ。
港の見える美しい景観。
アルジェリアの首都カスバにも同じようにテラスがあるが、今は汚れ、ごちゃごちゃしている。
チュニジアの首都チュニスも同様。
モザイクでなく、焼きタイルを使い、テラス内部の壁や座る場所に装飾を施す。
基本的にテラスには男性は来ない。
男は家の外に出て、市場で買い物をし、カフェで社交する。家の中では、ミントティーを入れ客をもてなすのが男の仕事。
女性が外に出る時は、シーツを体中に巻き、顔も肌も見せず、誰か分からないようにする。
最近は旧市街でもその風習は多少崩れてきたが。
市場で物を売ったり作ったりするのも原則皆男性。
パン屋の竈でパンを焼くのも男の仕事。
竈は共同体の什器という考え方。
スペインでもこうしたパン焼き竈が残っていた。
ハンマーム(公衆浴場/共同蒸し風呂)
男女別の時間設定。
夜中は安い宿にもなる。
イスラームでは体を清める事が祈りと合体する行為であるため、公衆浴場の文化が育った。
ヨーロッパでは、キリスト教が肉体を悪しきものと考えたため、古代ローマ時代の文化(*)も途絶えてしまった。
(*)ex.チュニス/カルタゴ、第15代皇帝アントニヌス・ピウスの浴場遺跡。
総面積35,000�屐�
AC.146〜162頃建造。
遺跡の向うに地中海が見える。
小さなアーチ型の入口は派手なペンキで塗られ、ハンマームである事が分かる。
ここでも内部の通路は曲がりくねって、入口からすぐ奥は覗けないようになっている。
ハンマームでは、人々はゆっくり過ごす。休憩所では半日おしゃべりをして過ごす事も。
特に女性にとっては、重要な社交と情報収集の場となった。
奥へ行く程温度が上昇していく。
一番奥にボイラー室。
竈を設置し、頼まれ仕事も受ける。
ex.ヤギの頭を時間をかけて焼く。脳ミソは男達のご馳走。
・ハンマームの別側面
幼いうちは男女共母親がハンマームに入れにくる。
男の子は7〜8歳になると、ここで割礼をする。
割礼後は、男性の時間に父親とハンマームに入る事になり、男女がここで明確に分けられる。
最近、特に新市街はバス付き住宅が増えてきたため、ハンマームに行かない人達もいる。
〈まとめ〉
・マラケシュとフェス、2つの都市に共通して見られる都市構造
市壁(城壁)と市門
フランス式新市街と隣接
メラーフ(ユダヤ人街)
市壁の外に墓地
迷宮のような路地構造
大モスク、メデルサ(神学校)、聖者廟
スーク(市場)
フォンドゥク(商人宿)
ハンマーム(公衆浴場)
・商業と交易の場。外部から来た者は主要部(主要道路)を通過するだけで、迷路のような住宅地には立ち入らない(立ち入れない)。
・中庭構造の建築(モスク、メデルサ、フォンドゥク、個人住宅)とその考え方
・男女の空間の分離
外部=男性
モスク、メデルサ、市場(スーク)、街路
内部=女性
聖者廟、ハンマーム、美容院
・広場
西欧の広場に相当するものはない(例外：マラケシュ ジェマ･エル･フナ広場)が、公共の泉をベースに発展した小規模の広場がある。
カフェもあるにはあるが、スーク近くの街路で寄り集まりお茶を飲むケースが多い。(男性のみ)
・古代地中海文明を受け継いだ公衆浴場(ハンマーム)の象徴と機能
講師 石川清子
テーマ 先週の続き、特にフェスについて
フェスを更に詳しく見てみる。
旧市街に入る観光客は城壁西のブージュルード門から入る。これが謂わば正門。
2本のメイン通り(幅2m程)があり、その周囲にスーク(市場)が並んでいる。
同業種がひと固まりに集まっている。
収益は、同業種組合で分配する方式。したがって、客を取り合ったり、値段を下げ合ったりしない。店頭に価格表はなく、販売価格は客と店員との間で決められる。
この2本の通りを北東へ歩くと、旧市街の中心地カラウィーン・モスクに到着する。
商売人達は、南のジャディード門から車で入り(車道はこれ1本のみ)、ルシーフ広場で車を停め、荷物をロバやラバに乗せて店に運ぶ。
カラウィーン・モスクは、単に祈る場所であって、ヨーロッパに見られるような装飾はない。
街の中心はモスクだけでなく、商店や商人宿(フォンドゥク)もあり、聖俗混在している。
その西にはフェズ川が流れており、街は大きくその西と東に分かれている。西は、チュニジアのケルアーンからの移住者が住むケルアーン(カイラワーン)地区、東は、レコンキスタ以降イベリア半島から逃れてきたイスラーム達の住むアンダルース地区とに分かれている。
フェズ川の上流にはなめし革職人が住む地域があり、染料を入れた多くの壺が並ぶ。
強烈な臭いがするため、ツアー業者はハーブを観光客に渡し、それを鼻の穴の下にかざして紛らす。
カラウィーン・モスクの西側近くには「キサリア」という特別のスークがある。高級品の絹織物の店が並び、ここら一帯だけ屋根がある。フェスのデパートと言っても良い。
キサリアの西にはムーレイ・イドリス廟がある。
イスラームは個人崇拝をしないのが原則だが、モロッコはイスラームの中心地(メッカやバグダッド)から離れており、規則が緩やか。
9世紀にモロッコの都をフェスに置いたムーレイ・イドリス2世を祀っている。
特に女性が多く願掛けに通う。
道の結節点の所々に小さな広場がある。30畳程の狭いもの。
泉が中心にあり、体を洗い清め、休憩する。
メイン通りの内側は居住地で迷路のようになっている。
曲がりくねった狭い道、窓はない。
入口もはっきりせず、中庭への通路も曲がっていて、中を窺えない。
スペインのパティオ式住居は、同じ中庭式建築でも、門に花を飾ったり、通路を真っ直ぐにし、奥の美しい庭が見えるようにしている
この辺りは文化の違いだろう。
内部を人に晒さないというのがイスラーム風と言える。
道や家は居住者だけが分かれば良いという考え方。外部の者が入れない防御の仕組み。
奥に行く程立派な邸がある。
2階建てが普通で、屋上はテラス。
テラスは女性と子供の場。
洗濯物ゆ絨毯を干し、おしゃべりをし、息抜きをして楽しむ。
港の見える美しい景観。
アルジェリアの首都カスバにも同じようにテラスがあるが、今は汚れ、ごちゃごちゃしている。
チュニジアの首都チュニスも同様。
モザイクでなく、焼きタイルを使い、テラス内部の壁や座る場所に装飾を施す。
基本的にテラスには男性は来ない。
男は家の外に出て、市場で買い物をし、カフェで社交する。家の中では、ミントティーを入れ客をもてなすのが男の仕事。
女性が外に出る時は、シーツを体中に巻き、顔も肌も見せず、誰か分からないようにする。
最近は旧市街でもその風習は多少崩れてきたが。
市場で物を売ったり作ったりするのも原則皆男性。
パン屋の竈でパンを焼くのも男の仕事。
竈は共同体の什器という考え方。
スペインでもこうしたパン焼き竈が残っていた。
ハンマーム(公衆浴場/共同蒸し風呂)
男女別の時間設定。
夜中は安い宿にもなる。
イスラームでは体を清める事が祈りと合体する行為であるため、公衆浴場の文化が育った。
ヨーロッパでは、キリスト教が肉体を悪しきものと考えたため、古代ローマ時代の文化(*)も途絶えてしまった。
(*)ex.チュニス/カルタゴ、第15代皇帝アントニヌス・ピウスの浴場遺跡。
総面積35,000�屐�
AC.146〜162頃建造。
遺跡の向うに地中海が見える。
小さなアーチ型の入口は派手なペンキで塗られ、ハンマームである事が分かる。
ここでも内部の通路は曲がりくねって、入口からすぐ奥は覗けないようになっている。
ハンマームでは、人々はゆっくり過ごす。休憩所では半日おしゃべりをして過ごす事も。
特に女性にとっては、重要な社交と情報収集の場となった。
奥へ行く程温度が上昇していく。
一番奥にボイラー室。
竈を設置し、頼まれ仕事も受ける。
ex.ヤギの頭を時間をかけて焼く。脳ミソは男達のご馳走。
・ハンマームの別側面
幼いうちは男女共母親がハンマームに入れにくる。
男の子は7〜8歳になると、ここで割礼をする。
割礼後は、男性の時間に父親とハンマームに入る事になり、男女がここで明確に分けられる。
最近、特に新市街はバス付き住宅が増えてきたため、ハンマームに行かない人達もいる。
〈まとめ〉
・マラケシュとフェス、2つの都市に共通して見られる都市構造
市壁(城壁)と市門
フランス式新市街と隣接
メラーフ(ユダヤ人街)
市壁の外に墓地
迷宮のような路地構造
大モスク、メデルサ(神学校)、聖者廟
スーク(市場)
フォンドゥク(商人宿)
ハンマーム(公衆浴場)
・商業と交易の場。外部から来た者は主要部(主要道路)を通過するだけで、迷路のような住宅地には立ち入らない(立ち入れない)。
・中庭構造の建築(モスク、メデルサ、フォンドゥク、個人住宅)とその考え方
・男女の空間の分離
外部=男性
モスク、メデルサ、市場(スーク)、街路
内部=女性
聖者廟、ハンマーム、美容院
・広場
西欧の広場に相当するものはない(例外：マラケシュ ジェマ･エル･フナ広場)が、公共の泉をベースに発展した小規模の広場がある。
カフェもあるにはあるが、スーク近くの街路で寄り集まりお茶を飲むケースが多い。(男性のみ)
・古代地中海文明を受け継いだ公衆浴場(ハンマーム)の象徴と機能
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