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2019年12月13日01:10

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12000年前に何が起きたのか?  5.脳科学と文化論2

前回の日記で紹介した
「神は脳が作った」という本の最大の主張は
世界に散らばった人類は平衡進化を遂げたということだ
ここが本書が行っている脳科学からの演繹的は仮設の最も重要な部分だろう

なのに 本書ではその前提となる部分についてかなり端折った書き方をしている

人類は10〜6万年ほど前にアフリカを出た
そして全世界に広がり
12000年ほど前 それ以降に順次
なんの文化的接触がないにもかかわらず
各所で農耕を始め
シャーマニズム的な原初的宗教を始め
複雑な道具作りを始めた
もっと言えば ヤスパースが提唱した枢軸時代
二千数百年ほど前に各所で独立的に現在に至るような宗教を生み出した

これらをどう解釈するか?
単に気候的な変動を理由にするだけではすまないものがある
なぜなら 出アフリカ以降 何度も温暖で農耕可能な時期はあったからだ
ではなぜ?
という答えを文化人類学者は脳科学にその答えを求める

脳は出アフリカ以前に十分に現在と同じ能力に発達していた
そう思われていた時期もある
そんなに昔ではなく つい最近のことだ

本書では 
「仮に4万年前の人類がいたとして あなたは何かを任せることにはならないだろう」
という
出アフリカ以降も人類の脳は発達し続けているという
では どうして世界に散らばった人類が同じような進化を遂げられたのか?
脳が新たな部位を作り上げるには
DNAの突然変異が必要になる
しかし 世界中で同時にそんなことは起こらない
そこで 進化したのは新たな脳の部位が追加されたとかではなく
そことの連絡経路が発達したのだということになる
脳神経には グリア細胞として知られる一部のミエリンという鞘で被覆されている
この被覆が行われている神経は
そこに流れる情報を素早く確実にニューロンまで届けることができる
しかもそこに遺伝子的な大きな変化はなく
発達したグリア細胞は遺伝する
ある意味 獲得形質が遺伝していった結果
世界で同時に脳が発達できるということだ

そして 脳は往々にして 本来の目的ではない脳の部位の使い方をする
言ってみれば 意図しない相互作用が働いて
その行為が生存に有利であったり どちらでも差し支えないが生存していける
となった場合には それらの部位をつなぐ神経に被覆が行われ
それが子孫にも遺伝していくということだ

そういった脳科学からの知見で
世界で平衡的に文化的進化が起きたということになる

で それが事実であるならば
現在の我々も その影響下にあるのは間違いないということであり
我々はなぜ 農耕をするのか しているのか
我々はなぜ 宗教を信じるのか 信じているのか
我々はなぜ リーダーシップを認めるのか 認めているのか
という問題にも
ある程度 演繹的に問題提起ができるということでもある

しかしまー
そうはいっても脳科学自体が
未だもってよちよち歩きの状態にあるので
これ以上前に進むには画期的な技術革新が必要となることは言うまでもない
ただ 原則的な部分は判明しつつあるので
ある程度の整合性があれば
歴史そのものに対してさらに詳しい仮説が生み出せるだろう

この分野は 毎年のように更新されていくので
どちらかといえば 哲学系の疑問提出能力が試されているような状況だ

もう時代は「人間学」とでも言った方がいい時代に入っている気がする
そういえば岡本太郎も文化人類学を専攻した理由を
「人間学がやりたかった」と言っていた
さすがだなあ タローちゃんw


続く
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