昔、加藤唐九郎という陶芸家がいました。
子どもでも知っている名前なのですから、そうとうえらい陶芸家だったはずです。
ただし加藤唐九郎は作品そのものよりも、永仁の壷事件という贋作事件で有名でした。
その毀誉褒貶相半ばする陶芸家の記念館が守山区にあるというので行ってみることにしました。
閑静な住宅地の中にある記念館のドアを開けると、係の人がガラスケースを開けて茶碗の写真を撮っていました。
なんでもホームページ用の写真を撮っているのだとか。
「よかったら手にとってみられますか？」
「えっ？いいんですか」
「お茶碗のよさは手にしてみてはじめてわかるものです」
おことばに甘えて抹茶碗を触らせていただきました。
ずっしりとした重みのある茶碗です。
そのことをいうと、唐九郎は戦国武将の茶の湯を念頭に焼いていたのだそうです。
次に唐九郎の遺作の茶碗を手にとってみました。
唐九郎は釜から出す前に息を引き取っているので、どんなふうしに仕上がったのか目にしていないといいます。
記念館を出る頃には、うさんくさいじいいさんという唐九郎のイメージはすっかり変わりました。
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