昨日今日で、お通夜、葬儀、共に滞りなく終わった。
次女が嫁いだ家の宗旨は神道であるため、お葬式も無論その作法に従って行われた。
私は、これ迄に神道の葬儀に参列した記憶がない。
神道では、人が亡くなる事を「帰幽(きゆう)」すると言う由。
生命というものは、神が人間にひと時「お任せになった」と考えるらしく、死んでその生命が神の世界に帰っていく、それを「帰幽」と呼ぶのだそうだ。
葬祭を執り行った神官(神主)が、ところどころで説明を入れながら、進行して下さった。
通夜は「遷霊祭」。
「遷霊」とは、霊が遷る、即ち肉体から魂が抜け出る事。
この作法時は、神官の指示に従い、蝋燭の灯を消し、照明を落とす。
「帰幽」とは、直截的には暗い所に帰るという意味である。
告別式は「神葬祭」。
ここでのメインは、神官の祭詞奏上と、玉串奉奠。つまり榊を奉納する。
香典も「(御)玉串料」とか「(御)榊料」と呼ぶ。
不祝儀袋に「御霊前」と書いていけなくはないが、間違っても「御仏前」と書いてはいけない。
玉串奉奠は仏式では焼香に当たる。
神道の葬儀の列席者は、焼香の代わりにこれを行う。(つまり焼香はない。)
神官から榊を受けたら、それを奉じたのち、いわゆる「二礼二拍手一礼」を行う訳だが、神社にお参りする時と違い、拍手は「忍手(しのびて)」と言って、パチパチと音を立ててはいけない。
(「二礼」とは、神と祖先それぞれに礼をするという事。)
今度４年生と1年生になる蒼と杏も、お父さんから前日教わったのか、この作法をちゃんとこなしていたので驚いた。
神官から「皆さん低頭して…」と言われる場面はたくさんあるが、それもしっかりやっていた。
「低頭」しなさいと言われても、普通小学生は判らないと思うが、周囲を見習ってやっていたのだろうか。
さすがに晟はできない。遷霊祭の時はあれこれ話しながら会場を歩き回り、葬場祭の際は次女に抱かれてぐっすり眠っていた。
昨日から「お祖母さま」と書いてきたが、ちび達からすれば曽祖母であって、専ら「ひいばあ」と呼ばれていた。
棺の中には、杏がこれ迄描き溜めた「ひいばあ」の絵が何枚も入っていた。誕生祝い時に描いたものだろう、絵の上に「ひいばあ90さいおめでとう」と添えられているものもあった。
最後の数年間は少々ものごとが判らなくなり、養護施設に入っていた。
施設に入る直前、私が訪問すると笑顔を見せてくれたものだが、しばらくすると「この方はどなただったかいやあ？」と。
先方のお父さまが「〇〇ちゃんのお父さんだよ」と言うと、「ああ、〇〇ちゃんのお父さん！」と手を打つが、また少しすると「この方はどなただったかいやあ？」と。
でも、愛敬があって憎めないお人柄だった。
病んで亡くなったのでないから、棺の中のひいばあのお顔は、穏やかでまるで眠っているかのようだった。
少しピンク色の口紅を引いていた。
出棺時には、私もその隅を持たせて頂いた。
杏は泣かなかったが、蒼は泣いていた。晟は次女の腕の中で夢の中。
両日共お天気に恵まれ、静かで安らかなお葬式であった。
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