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2018年06月04日20:32

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【読書】 最近読んだ本 備忘録

最近読んだ本の、備忘的メモ。

●「論証のレトリック」 (浅野楢英著、ちくま学芸文庫)

相手を納得させる、説得力のある議論とはどのようなものかを、古代ギリシアの言論術に学ぶという本である。アリストテレスのレートリケー理論を解説し、ロゴスによる説得立証に役立つ固有トポス、エーストまたはパトスによる説得立証に役立つ固有トポスの例をあげ、レートリケーとディアレクティケー、すなわち修辞法と弁証法の対比などについて、プラトンの批判などをからめながら述べる。と書いていても、実はよく分からない、難しい本であった。要するに、「真実であること」よりも「真実らしく見えること」が、レトリックの胆ということなのだろうか...。


●「徒然草」 (兼好法師著/小川剛生訳注、角川文庫)

半年位前に小川剛生志著「兼好法師」(中公新書)を読んで、一度「徒然草」を通して読もうと思っていたもの。現代語訳と丁寧な脚注が付いているので、まずは現代語訳を通して読んで、続いて原文を読むという流れで読んだ。書かれている内容は、全部ではないが共感できる部分もあり、現代まで読み継がれているという点でも優れた随筆といえるだろう。「心にうつりゆくよしなしごとを、そこはかとなく書きくつくれば」とは、まさに現代のSNSの「つぶやき」に通じるが、果たして後世まで残るようなことを書いている人がどれほどいるか...。


●「通勤電車のはなし」 (佐藤信之著、中公新書)

東京や大阪の大都市圏で生活する者にとって、通勤電車は欠かせない存在である。通勤時間は無駄な時間であり、この苦痛に耐える時間を有意義に利用すれば年間7兆円の価値が生まれるという。どうすれば通勤電車が快適になるのか。かつては、とにかく詰め込んで輸送するだけで、快適性は二の次だったが、人口減少社会の現在ではそれでは不可である。すでに路線網は整ったとされる東京圏にも路線新設の余地はあるし、乗り継ぎの不便さも解消する必要がある。編成数増加や本数増加で着席率も上げていく必要がある。東京圏、大阪圏の通勤電車の改善の歴史、現状と今後の計画、課題と対策など、通勤電車についてのあれこれを掘り下げた本である。


●「偉人はそこまで言っていない。」 (堀江宏樹著、PHP文庫)

少々軽めの歴史本(?)を1冊。歴史上の偉人が遺した名言は数々ある。それらはその人物のイメージとも結び付いている。しかし、本当にそんなことを言ったのだろうか。実際、記録が残っているものはほとんどないし、多くは後世の人間が創作したものであるというのは容易に想像できることである。小説や映画で作られたものであったり、それに近いことは確かに言ったとしても、その背景を知れば本来の意図は別物であり、ただその部分だけを取り出して「名言」になっていたりする。そんな数々の「名言」を取り上げ、実際はどうだったのかを検証した本であり、ちょっと息抜きに楽しめる内容だ。


●「ソング・オブ・サマー 真実のディーリアス」 (エリック・フェンビー著/小町碧訳、アルテスパブリッシング)

目が見えず全身が麻痺した「偏屈老人」、晩年のディーリアスの家に住み込んで、ディーリアスの目となり手となって作曲を助けた若き作曲家フェンビーによる、死までの6年間の記録である。1936年に刊行されたその本が、ロンドン在住のヴァイオリニスト小町碧によって日本語に訳されてようやく出た。ディーリアスはヨークシャー生まれだが、両親はドイツからの移民。フロリダでアメリカの民族音楽に触れ、ライプツィヒで音楽を学び、グリーグから影響を受け、パリで自らの音楽を開花させ、フランスの田舎町グレー・シュル・ロワンで生涯の半分を過ごす。こうなると、ディーリアスを「イギリスの作曲家」というのは正しくないかもしれない。ディーリアスの作品も、この本を読んでから聴くと、その良さが分かる気がする。(ここのところ、ビーチャム指揮によるディーリアス作品を続けて聴いていた。)
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