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2017年09月15日17:41

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なぜ増税が議論されるのか

 福田康夫内閣の頃だから、いまからちょうど十年前(2007年9月〜2008年8月)の頃だったと思う。新聞社による世論調査で、消費税率を上げる議論について大半が「その必要はない」という回答だった。その理由は、「税金の無駄遣いをなくし、公務員の給与を引き下げればいい」というもので、そうした空気がのちの民主党政権を生む背景にもなった。
 ちょうど、「消えた年金問題」がクローズアップされ、自民党政権に対する失望も広がっていた時である。第一次安倍内閣は、そうしたなかで退陣を余儀なくされた。

 高齢者が増加し、国家予算に占める社会保障の比率は、年々上昇している。民主党政権はそうした状況を踏まえ、「コンクリートから人へ」ということで、公共事業を削減し、社会保障に充てようとした。そして現在でも基本的にはその流れは継続しており、かつての公共事業費の半分近い予算が社会保障に向けられている。しかしそれでも、年金や医療、福祉に十分なお金は行き渡っていない。そもそも予算規模が違うのだ。

 以前も触れたように、国家予算(一般会計)に占める社会保障関連費は、全体の三分の一、約33兆円という規模である。これに対して、公共事業は6兆円、教育・科学予算と防衛関連費はそれぞれ5兆円に過ぎない。海外への経済協力費に至っては5000億円で、全体の0.5%である。

 私も増税なんてできればして欲しくはないのだけれど、それをしなくてもいい理由として、公共事業や人件費の削減を挙げることはとてもできない。国会議員を何人減らそうが、焼け石に水どころか、水滴にもならないからだ。社会保障を現状の水準で支えるためには、増税以外に有効な手段は見当たらない。しかも、社会保障が国家予算を圧迫すればするほど、教育や防衛などにもしわ寄せがくる。公共事業だって、何も道路を掘り返しているだけではない。防災や事故防止のための保守、改良工事はしないわけにはいかない。

 それは、少なくとも十年前から自明のことではあったのだけれど、やはり増税は避けたいというのが有権者の本音だろう。それにメディアが乗っかるかたちでここまできた。


 とはいえ、消費税の税率を上げることについて、有権者の忌避は予想以上に大きい。一般には、国際的にみて日本の消費税率は低いから、増税の余地ありと考えられている。
 ただ興味深いことに、所得税などの直接税と、消費税のような間接税に対する相性というのは国によっても違いがあるようで、日本は特に消費税への忌避が強い。その傾向を無視して税率アップを行うと、思った以上に買い控えが広がり、景気の足を引っ張ってしまう。
 税制というのは、納税者に対する公平性と、それが経済の足かせになりにくくするための工夫が必要である。こういう点からすると、日本の場合は消費税よりも所得税などのアップが増税の手法としては適切ではないかとも思う。

 なぜ、消費税をとりわけ嫌うのかは、憶測でしかないけれど、徴税意識をいやが上にも感じてしまうからかもしれない。これに対して所得税などはサラリーマンなどは給与から直接引かれているので納税への抵抗があまり感じられない、という説もある。
 実際のところは分からない。ただ、私も確定申告をするようになるまで、自分が所得税などどれだけ支払っているのか、強く意識したことはなかった。こうした納税システムもまた、税に対する私たちの姿勢に影響を与えている可能性はある。


 いずれにしても、国家予算が逼迫している事実は変わらない。そのために、より多くの税収を得る手段としては、景気を無理やりにでもよくするために積極財政を行うか、財政再建を主軸にした緊縮財政をとるか、というかたちになるのだけれど、これまた簡単に二者択一できるものではないところが難しい。
 また、社会保障費が増加しているのなら、現状の水準から下げることも検討に入れる必要がある。それが、年金受給をさらに遅くすることや、高齢者の医療費をアップさせるという政策につながる。ただ、これには批判も大きく、実際に持病を抱えながら年金生活をしている高齢者にとって、さらなる負担には耐えられないケースも出てくるだろう。

 このように、議論の上だけでも、予算と社会保障、景気の関係については、誰もが納得できる方法は見出しにくく、それゆえ八方ふさがりみたいなことになってしまっている。繰り返すように、こういう話題になると「国会議員を減らせ」「公務員の給与を下げろ」「公共事業をなくせ」「海外援助をするな」という声が出るけれど、それで解決するほど問題は単純でも、容易でもないということは議論の土台として認識しておきたい。

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■消費増税見送り6割=時事世論調査
(時事通信社 - 09月15日 16:00)
http://news.mixi.jp/view_news.pl?media_id=4&from=diary&id=4767561
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