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2017年06月29日11:58

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一票の格差と有権者の関心

 一票の格差是正と、これからも続いていく人口の減少に選挙制度はどのような変更をすべきか。この問題は、今後ますます大きくなっていくことだろう。

 都道府県を選挙区の最大単位としてきた従来の制度に対して、最高裁は2012年、一票の格差を是正するためには都道府県をまたいだ合同選挙区、いわゆる合区を創出するのもやむを得ないという判断を下した。これを受けて、2015年に鳥取県と島根県、徳島県と高知県を併せた合区を伴う改正公職選挙法が、国会の審議を経て可決・成立した。
 2016年には、合区を含む新たな選挙区のもとで参院選が行われた。結果的に、合区が行われた四県中、三県において投票率は過去最低を記録している。

 一票の格差是正を前提として、今後の選挙制度を考える上では、いくつかの方法が考えられる。ひとつは、既定の方針どおり、国会議員の数を減らしつつ、選挙区の変更や合区を含む合併を繰り返していく方法である。ただしこれは、人の移動や人口の減少がこれまで以上に進むことから、地方ではますます合区が増える。都市部も無関係ではなく、タワーマンションなどの開発が続けば、局地的に人口が増加してしまい、これまた選挙区が番地単位でコロコロ変わってしまう。
 これでは、有権者も候補者が誰なのか分からなくなり、候補者もまた知名度を広げることができなくなる。結果的に、政治や選挙に対する関心が失われ、投票率のさらなる減少、間接民主主義の根幹が揺らぐことになってしまう。

 その他の方法もみてみよう。過去、衆院選はひとつの選挙区に3〜5名の当選者を出す中選挙区制を導入してきた。これであれば、選挙区そのものを大きくすることが可能なので、頻繁な変更はなくてよい。格差是正は、選挙区ごとの定数を変えれば済む。
 しかし、中選挙区制は戦後の派閥政治の温床となってきたという批判も根強い。一部でその復活を唱える政治家や専門家もいないわけではないけれども、一般的には否定的な意見が多い。

 あるいは思い切って比例代表制のみにしてしまう。有権者は政党を単位として投票を行う。日本でも、衆参両院で一部、比例代表制を採用している。
 比例代表制のみにすれば、そもそも選挙区が必要なくなる。日本で行われているように、地域ごとのブロック制にしても定数の増減で一票の格差を是正しやすい。
 ただこれも、政治家の顔は見えにくく、各地域の利害をうまく調整できない懸念もある。

 さらには、選挙制度ではなく、議会そのものの役割を変えればいいという意見もある。アメリカの上院のように、参院議員を都道府県の代表とする。こうすれば、都道府県の人口差を問題とせず、地域の利害を熟知した人物を国会に送り出すことができる。
 ただしこれを実現させるには、憲法改正を踏まなければならず、また参院の職権も大幅な変更が求められることになるだろう。


 小選挙区のメリットは、地域ごとによく知る候補者がいて、彼らの主張や行動についても有権者が身近に接しやすいという点である。しかし、選挙区を頻繁に変更すると、そういうメリットを摘んでしまうことになりかねない。
 現行制度をなるべく維持し、少なくとも市区町村という自治体単位を分断した選挙区を作らないようにする。これを前提とするならば、国会議員を減らすのではなく、増やすという手段もある。もちろん、「人口が減っているのに議員だけ増やしてどうする」という批判が出るのは間違いないのだけれど、何度か触れてきたように、議論のひとつに加えることがあってもいい。

 国政選挙のこれからを検討するに当たって、私は基礎自治体(市区町村)の単位になるべく沿った選挙区を作ることが望ましいと考えている。なぜならすでにみたとおり、県をまたぐような広すぎる選挙区も、番地単位の細かすぎる選挙区も、ともに有権者への関心を損なうものに他ならないからだ。一票の格差を是正するのも、民主主義の根幹であるのなら、投票率の維持と向上もまた、同じくらい重要なことではないか。
 有権者の関心を失い、かたちばかりの選挙が続くことは、これからの政治や社会にとってもいい結果をもたらさない。このあたりの意識も私たちは強く持っておくべきだろう。

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