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2017年06月10日13:12

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「一票の格差」と細分化される区割り

 「一票の格差」を是正する目的で、衆院区割り改定法が参院でも可決、成立した。19都道府県、97選挙区と比例代表の定数が変更になり、全体で10議席減の465議席となる。

 新たな区割りは、地方で議席減になる県も大きな影響を受けるけれども、東京など大都市圏でも、選挙区ごとの有権者数を調整しようと、かなり無茶なことをしている。市区町村単位でないのはもちろん、A区とB区の一部で〇〇町一丁目、二丁目、三丁目は1番〜3番、8番〜13番…といったように、網目のように細分化している。そして「一票の格差」が問題になる以上、常に選挙区も変更を強いられることになるだろう。
 「一票の格差」については、最高裁の判断でも衆院で2.129倍、参院で4.77倍で違憲状態とされ、基準も年々厳しくなっている。もちろん、一票の重みが地域によって異なる状況は少しでも改善させなければならない。ただ、その基準を厳しくすればするほど、選挙区はより複雑になっていく。定数削減も合わさればなおさらだ。

 「一票の格差」のみを問題とするなら、選挙制度を大きく変更すればよい。たとえば、現在は小選挙区比例代表並立制を採っているけれど、これを単純小選挙区制にするだけで、選挙区の数が176増える計算になる。あるいは、逆にブロックごとに比例代表制のみにすれば、選挙区そのものが必要なくなる。
 けれども、現行の選挙制度も含め、これらは一長一短がある。おまけに各党、議員ごとの利害も関係するとなれば、制度変更は非常に困難になる。
 たとえば、単純小選挙区制は、先日行われていたイギリスや、アメリカ下院選で採用されている。選挙区ごとに一人が選ばれるので、議員は国民の代表であるとともに地域の代弁者としての活躍が期待される。ただし、たとえ僅差であっても当選者は一人に絞られるため、死票が出やすく、大政党に有利で少数政党は生き残りが難しい。
 比例代表制は、各政党に一票を入れるシステムであり、この場合は死票が出にくい。ただ、特定の候補者を応援したい場合、選出方式によってはそれがかなわない。

 現行の小選挙区比例代表並立制は、その折衷ともいえる。しかし、この制度を維持しようとすれば、「一票の格差」を是正する必要性はより高まってくる。
 現行制度を維持しながら、「一票の格差」を緩和する方法としては、議員定数を増やすということも選択肢のひとつになり得る。国会議員が多いのは税金のムダであり、歳費も多すぎるというのが世論であるのは承知しているけれども、間接民主制の建前からすれば、議員は国民の代表である。つまり、議員が多ければ多いほど、国民の声がより政治に反映されやすい。
 「政治家が仕事をしない」という批判も、経費が限られているために、特に官僚の力を借りられない野党は、大規模な調査や議員立法の策定がしにくい構造となっている点を無視してはいけない。政治家がその歳費で必要以上に私腹を肥やすのは困るけれど、その数も歳費もどんどん減らせば、官僚や政府の影響力がますます強まってしまう。

 その他、選挙制度としては選挙区の規模を拡大して、複数の候補者に投票できる連記制、複数人区の設置など、かつての中選挙区制に近いものを導入するという手段もなくはない。しかしかつてのように、党内派閥が政策決定に影響力を行使する環境が生まれやすいというデメリットも考えられる。

 いずれにしても、「一票の格差」を是正するために、定数削減も加えつつ区割り変更を繰り返すいまのやり方は、そろそろ限界を迎えているようにも思われる。選挙のたびに「格差」が叫ばれ、司法がこれを判断し、政府で変更案を準備し、国会で審議を繰り返す。この労力やコストは決して小さいものではない。
 同じ町内に住みながら、選挙区がそのたびに違ってくる。これは有権者にとっても、候補者にとっても混乱させるものだし、選挙や政治への関心低下にもつながりかねない。

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衆院区割り、97選挙区で変更
http://news.mixi.jp/view_news.pl?media_id=2&from=diary&id=4613984
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