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2017年06月09日18:25

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左右の分断がもたらすイギリス政治の危機 2017年総選挙

 イギリス首相の勝負勘が、このところ狂ってばかりいる。それがイギリスだけでなく、ヨーロッパ、国際社会に不透明感をもたらしている。

 ちょうど一年前、EUからの離脱を問う国民投票を行ったのが当時のキャメロン首相だった。彼は2015年の総選挙で、保守党政権が再任されればEU離脱の是非を問う国民投票を行うと公約していた。結果は、保守党が予想を上回る議席を得て、過半数を回復した。
 そして国民投票を実施したのだけれど、当のキャメロン首相は残留派に属し、保守党・労働党の議員も多くが残留を訴えていた。事前の予測では、接戦になるものの、EU離脱は否決されるだろうと思われていた。ところがふたを開けてみると、大どんでん返しが待っていたわけである。

 キャメロン首相は、この責任を取って辞意を表明し、内相だったメイ氏が新たに首相に任命された。新内閣は、EU離脱という決定を遂行する役目を果たさなければならない。
 ただ、EU側との交渉は難航が予想され、それに対峙するには世論の強い後押しが必要とされた。メイ首相が敢えて下院の解散・総選挙に打って出たのは、そういう理由があった。

 総選挙について事前の予測は、保守党の圧勝というものだった。ところが総選挙が近づくにつれて、保守党と労働党の支持率は拮抗していく。保守党圧勝によって、メイ首相の指導力を強化するという当初のシナリオが崩れつつあった。

 総選挙前日の保守党・労働党の支持率は、やや保守党が持ち直し、過半数が確保できるかどうかという見通しであったものの、投票時の出口調査によって、保守党の過半数確保は厳しいとの結果が出た。そして選挙も、保守党過半数割れ、労働党の躍進という結果に終わる。

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 メイ首相の目論見は外れ、政権を維持するためには他党と連立を組むか、少数与党で議会に臨むか、どちらかの選択しかなくなった。あるいは、メイ首相が責任を取って辞任するか、再選挙というシナリオもなくはないが、いずれにしても政局は流動化し、首相が強い指導力を発揮する見通しは、現段階で全くなくなっている。

 ただ私は、今回の総選挙について保守党の敗北という以上に、労働党の躍進という点に注目したい。というのも、労働党は30議席以上の増加を果たしたのだけれど、これは保守党からだけでなく、前回躍進したスコットランド民族党からも議席を奪い返しているからである。
 もともと労働党は、スコットランドにも強い支持基盤を持っていた。けれども前回の総選挙で、地域政党であるスコットランド民族党に地盤の多くを奪われてしまっていた。こののち、労働党はコービン氏を党首に迎え、従来の中道路線から左派路線へ転換している。コービン氏自身が民主社会主義者であり、社会保障政策のため積極的な財政出動を支持する立場にある。

 保守党が緊縮財政、とりわけメイ政権は社会保障にメスを入れようとしているなかで、有権者は反発を募らせていた。そしてその反発は、労働党が示す政策への共感を生んでいたのである。

 今回の総選挙では、保守・労働の二大政党が議席の多くを占めた。ただし、保守党は右派、労働党は左派傾向を強めており、中道を欠く状況にもなっている。このことは、EU離脱や経済政策について挙国体制が採りにくく、世論の分断を示している。
 イギリスの政局は、議席の数からいっても流動的にならざるを得ないけれども、中道路線を欠くことによって、実質的にも宙づり議会(ハング・パーラメント)という状況が続いていかざるを得ない。イギリス政治の混迷と危機、そして分断という状況に、終わりが見えない。

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英総選挙、保守党の過半数割れ確実に=ロイター算出
http://news.mixi.jp/view_news.pl?media_id=52&from=diary&id=4613003
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