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2017年04月01日18:34

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読書日記Nо.989(近江八幡のヴォーリズ)

■門井慶喜「屋根をかける人」2016年12月KADOKAWA刊

いつのまにか、年度が改まって、本日は4月1日。
マイミクの皆さんは、ご健勝でいらっしゃいますでしょうか。

本日の東京は冷たい雨が降っていて、10日ほど前に開花した桜も、
5分咲きくらいで、足踏みしています。

昨日は、わが社でも、新入社員を迎えて入社式を行いました。
フレッシュな若者が入ると、職場が華やぎますね。

さて、本書でした。

アメリカ合衆国から、プロテスタントの伝道師として来日後、滋賀県の
近江八幡市を拠点に、日本で数多くの西洋建築を手掛けた建築家
ウイリアム・メレル・ヴォーリズの評伝的小説なので、手に取った次第。

ヴォーリズの名を最初に目にしたのは、司馬遼太郎の「街道をゆく」
の近江編だったか忘れてしまったが、司馬さんが絶賛していたのを
記憶している。

20年くらい前だったか、ヴォーリズの作品である、近江八幡の豊郷小
学校の校舎を壊すかどうかで、街で政争が起きたというニュースも
覚えている。

近年では、内田樹さんが教鞭をとった神戸女学院大学がヴォーリズの
作品で、内田樹さんも、その学び舎のすばらしさを、何度も著書で書いて
いた。

ヴォーリズって、何者だったのだろう、という尽せぬ興味があった。
本書は、評伝ではなく、事実をもとにしたフィクションだが、いやぁとても
面白かった。

近江兄弟社というメンソレータムの会社をつくったのもヴォーリズだったのは
全く知らなかった。

惹句を紹介しますね。

“今も日本各地で現役の建築として、人々に愛されているヴォーリズ作品。
しかし、意外なことに、ヴォーリズその人は生粋の建築家ではなかった。”

“そもそも彼はキリスト教の伝道師であり、日露戦争のさなか英語教師として
近江八幡の商業学校に赴任した。そこから建築の世界に足を踏み入れ、
さらにはメンソレータムの販売まで始め、今日の名声を得た。”

“その足跡をリズムよく追いつつ、物語の隠れた核となるのは、敬虔なキリスト
教徒の彼が天皇制及び天皇その人と、いかに折り合いをつけていくかという
心の遍歴だ。”

“それはすなわち、生真面目と思えばときに意地悪、ときに欲張り、ときに情熱家、
実に人間くさいヴォーリズが、日本という国と真摯に繰り広げた対話の軌跡でもある。”

一番興味深い、驚愕したのは、敗戦後、マッカーサーを元帥とするアメリカ占領軍
が天皇の処遇について、悩んでいたとき、天皇に人間宣言をしてもらって、
日本国の象徴として存続してもらう、ことを、マッカーサーに進言したのが、ヴォーリズ
だったということ。

昭和天皇は、昭和22年6月、京都御所にヴォーリズを招いて、礼を述べたという。
「青い目の近江商人」、だけでなく、「昭和天皇を守ったアメリカ人」だったとのこと。

この話は、知らなかった。ますます、ヴォーリズという人間が興味深くなった(^^♪

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