mixiユーザー(id:5540901)

2016年11月15日21:29

334 view

読書日記Nо.958(貧しても、鈍するな)

■橋本治「大不況には本を読む」2015年6月河出文庫

積読書の虫干しで、手に取った本。
昨年刊行されたが、書店の店頭で手に取ったのは、今春。

橋本治さんの読者ではあるが、大量の著作がある作家さんなので、
ごく一部しか読んでなくて、本書も購入に至ったなにがしかの思いが
あったと思うが、思い出せない。

でも、面白かった。

さすが、橋本治さん。他では読めない、オリジナリティーある文章は、
面白くて、堪能すること、しきりであった。

2016年現在の日本は、大不況ではなく、アベノミクスのゆくえや、
アメリカ大統領選で、トランプ候補が勝利をおさめたことによって、
この先どうなるのだろうという不安はあるが、本書の初版が刊行された
のは、2009年で、リーマンショックに打ちのめされていたころ。

その時に、橋本治さんは、「大不況には本を読め」とのたまった。

そのココロは、本日記のタイトルでも一部使った、帯の文言。

“貧しても、鈍するな。日本人が今、やるべきことは何か?”

惹句も紹介しますね。

“成功に輝く日本近代の150年は過去となった。いま日本人はどう生きる
べきか。その答えを探すため、貧しても鈍する前に、本を読む。 ”

“「思想性ゼロ」の国・日本は、二十世紀後半に貿易戦争に勝利し、一億
総中流を実現させた。だが、ペリーの黒船来航に始まる近代百五十年の
成功体験はもはや過去となり、不景気が当たり前になってしまった。”

“いま日本人のなすべきことは?―貧しても、鈍する前に、本を読め。
橋本治がすべての現代日本人におくる救国の書。 ”

なぜ、本を読むのか、著者は、こんな風に言います。

“「本を読む」ということは、「書き手の言うことをそのまま受け入れて従う」
ことではありません。「書かれている」ことを読んで、「そこに書かれていない
ことを考える」というのが「本を読む」です。”

“なぜ本に「書かれていないこと」が存在するのかと言えば、「本の書き手
の視点」が、「その本の読み手の視点」と、必ずしも一致しないからです。”

“「書き手はっこう言っているが、読み手である自分にとってはどうなんだろう?」
というズレが、必ず出ます。”

“だからこそ、本の中には、「書かれていないこと」が存在して、読み手は、
「その本に書かれていない自分のあり方」を探すのです。つまり、行間とは
「読者のいる場所」なのです。”

素晴らしい、読書論ですね。

その読書論も、すばらしいのですが、前半の日本の近代化150年の経済
についての論考が、どんな経済書にも書かれていない、橋本治の地声の
論考で、素晴らしかった。

目から鱗がぽろぽろ落ちて、頭がすっきりと整理できました(^^♪
26 16

コメント

mixiユーザー

ログインしてコメントを確認・投稿する

<2016年11月>
  12345
6789101112
13141516171819
20212223242526
27282930