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2016年09月20日21:03

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読書日記Nо.945(星野道夫、魂で読む書)

■星野道夫「旅をする木」2013年第23刷文春文庫

故郷の老母が、入院したというので、この連休は帰郷して、見舞い
に行ってきた。本書は、その旅に携行した本。

老母は、幸い、快方に向かっていて、ひと安心だが、老齢なので、
離れて暮らしている息子には、心配はつきない。

さて、本書だが、休日に行く、紀伊国屋書店・新宿店の文庫コーナー
で平積みにされていて、手が伸びた。

文庫の平積みコーナーは、たいてい新刊が並ぶのだが、紀伊國屋の
新宿店は、発刊されてしばらく経った本でも、書店員さんのオススメ本
が、並ぶので、読書ファンとしてはうれしい。

星野道夫さんの本は、本書を含めて、3点並んでいたが、なぜだろうと
思ったら、今年2016年は、星野道夫の没後20年の節目だった。

マイミクさんなら、知っている方も多いと思うが、星野道夫さんの略歴を
まず紹介しますね。

1952年生まれ。慶応大学経済学部卒業。78年アラスカ大学野生動物
管理学部に入学。82年アニマ賞、90年木村伊兵衛賞受賞。96年、カム
チャツカにて逝去。著書に「星野道夫の全仕事」(全4巻)、「ノーザンライツ」、
「星野道夫著作集」(全5巻)などがある。

私は、星野道夫さんを、アラスカを主フィールドとした写真家で、アラスカ
でクマに襲われて、若くして亡くなった人だと記憶している。

でも、今まで縁がなく、本は手に取ったことがなかった。

写真家で、文章の上手い方がいて、最近、この読書日記でとりあげた
橋口譲二さんもそうだが、星野道夫さんの文章も、読者の魂の芯に触れる
ような文章を書く人だと、本書を読んで分かった。

本書の惹句を紹介。

“広大な大地と海に囲まれ、正確に季節がめぐるアラスカ。1978年に初めて
降り立った時から、その美しくも厳しい自然と動物たちの生き様を写真に撮る日々。”

“その中で出会ったアラスカ先住民族の人々や開拓時代にやってきた白人たちの
生と死が隣り合わせの生活を、静かでかつ味わい深い言葉で綴る33篇を収録。 ”

“正確に季節がめぐるアラスカの大地と海。そこに住むエスキモーや白人の
単純で陰翳深い生と死を、味わい深い文章で描く。天と地と人が織りなす物語を、
暖かく語りかけてくるエッセイ集。”

本書のラスト近くの、文章も引用。

“頬を撫でる極北の風の感触、夜のツンドラの甘い匂い、白夜の淡い光、見過ごし
そうな小さなワスレナグサのたたずまい・・・ふと立ち止まり、少し気持ちを込めて、
五感の記憶の中にそんな風景を残してゆきたい。”

“何も生み出すことのない、ただ流れてゆく時を大切にしたい。あわただしい、
人間の日々の営みと並行して、もうひとつの時間が流れていることを、いつも
心のどこかに感じていたい。”

“そんなことを、いつの日か、自分の子どもに伝えてゆけるだろうか。”

“いつまでも眠ることができなかった。風の音に耳をすませながら、生まれたばかり
の、まだ見たことのない生命の気配を、夜の闇の中に捜していた。”

魂に触れる、アラスカの広さと静けさ、人の命の儚さとかけがえのなさが、余韻
深く迫ってきて、とても幸せな読書体験だった(^^♪
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