mixiユーザー(id:12784286)

2016年07月07日20:46

287 view

【読書】 最近読んだ本 備忘録

不定期に書いている、読んだ本の備忘録。

●「国境の人びと」 (山田吉彦著、新潮選書)

 タイトルから外国の話かと一瞬思うが、これは我が国、日本の国境の話である。日本は世界で六番目に広い海を持つ海洋国で、その果ての島々がすなわち「国境」の土地である。紛争がらみの尖閣諸島、竹島、北方四島、対馬などの現況、与那国島、小笠原、大東諸島など離島の現状の課題、奄美、甑島、竹富島など「忘れられし島々」の様子など、「国境」を実際に巡り続けた著者が語る最前線レポートである。そして、結局はそこに日本人が住み、生活や文化が息づいていることこそ、国防の上でも重要な点だとも説く。


●「リメイクの日本文学史」 (今野真二著、平凡社新書)

 文学作品は書き換えを誘う。和歌の本歌取りや、「源氏物語」や「牡丹燈籠」などの古典文学をベースにしたリメイク作品、外国作品の翻案など、その例は多い。さらに、作者自身による推敲の結果、初出以降に細部に変化があるものも多く、漱石や宮沢賢治や芥川や井伏などの作品を例に述べている。江戸川乱歩の作品を少年向けにやさしく書き直したものもあるし、歌詞も「時局」の影響下で作られた部分が戦後改変されたり。まさに文学作品は、書き換えられることによって継承していくものかもしれない。


●「「食いもの」の神語り」 (木村紀子著、角川選書)

 太古の日本人は何を食べていたのか。それを古事記、日本書紀、風土記、万葉集などに書かれた、決して多くない情報から探っていく。神話(神語り)の世界では、オホゲツ姫の殺害と穀草の誕生の話や、天照大神による水田稲作開始の話などを取り上げ、海サチ、山サチや、祝詞のミテグラなどについて述べる。後半は、カヒ、ナ、シシ、クリ、モ、ノリ、ネ、イネ、イヒ、シホ、ス、ミヅ、サケ、...など、現在にも通じる「食」にまつわる言葉の意味するところを探っていくという、日本の食の遠源に迫る本。

●「目玉の体操」 (池内紀著、幻戯書房)

 何やら変なタイトルだが、旅先や町の散策の途中で、ふと「おや?」と思って立ち止まり、改めて見ると、一見何気ない光景の中に個性的な風物が見えたり、ハッとするような造形の何かがあったりすることがある。それを称して「目玉の体操」と著者は言っているのだ。日常の中の非日常である。地元の人や一般の観光客は気にも留めないものがほとんどだが、そこに無限の詩を見つける楽しさ。それはネットでは決して得られないと思う。
0 6

コメント

mixiユーザー

ログインしてコメントを確認・投稿する

<2016年07月>
     12
3456789
10111213141516
17181920212223
24252627282930
31