mixiユーザー(id:12784286)

2016年05月16日20:58

313 view

【読書】 最近読んだ本 備忘録

不定期に書いている読んだ本の備忘録。

●「生の岸辺−伊福部昭の風景(パサージュ)」 (柴橋伴夫著、藤田印刷エクセレントブックス)

 作曲家伊福部昭の作品の背景となった、生まれ育った環境における「風景」を追って、伊福部の生涯に迫る評伝である。伊福部家発祥の地である因幡の宇部神社に始まり、音更、札幌、厚岸と、伊福部の「生の岸辺」を訪ねる旅。チェレプニンとの出会い、戦時中の創作活動から、舞踊音楽、映画音楽、歌曲などから、伊福部思想に迫る渾身の著作である。


●「オホーツクの古代史」 (菊池俊彦著、平凡社新書)

 ほとんど語られることのなかったオホーツクの古代文化についての珍しい本。北海道オホーツク沿岸、千島列島、サハリン、カムチャツカ半島等をめぐる地域に、縄文でも弥生でもない、北方民族の文化が築かれていた。中国の史料に見出される「流鬼国」があったのはサハリンかカムチャツカ半島かで長年論争が続いたが、著者は「流鬼国はサハリン島だった」と結論付けている。最後の一文がそれなので、一番言いたかったことはそれだろう。オホーツクの古代文明にはまだ謎が多いようだ。 


●「日本の古代道路」 (近江俊秀著、角川選書)

 律令国家の成立とともに全国に張り巡らされた道路は、中央と地方拠点を最短で結ぶために整備されたものであり、通過する地方の農民にとっては苦以外の何物でもなかった。それらの古代道路を、平将門の乱の記憶を伝える関東、海と陸の交わる石川県、東海道と東山道が出会う福島県、宇佐八幡の勅使街道などをあげつつ、地域や社会への影響などを考察し綴った本。現在も古代道路の痕跡は残っているところも多く、訪ね歩くのも面白そう。


●「古代東アジアの女帝」 (入江曜子著、岩波新書)

 7世紀の東アジアは女帝が続々と登場した。日本で、聖徳太子の叔母である推古をはじめ、蘇我一族のダミーとして扱われた皇極、その皇極が大化改新の理念を掲げて重祚した斉明、中大兄との禁断の恋ゆえに歴史から抹殺された幻の女帝間人、自らをアマテラスになぞらえた持統、新羅では独身の女帝善徳、美貌も才能のうちという真徳が、三韓統一への道を開いた。唐では、武則天が男尊女卑を打ち破って理想の国を打ち建てながら、権力におぼれていった。男性の天皇が定まるまでの「中継ぎ天皇」として見られがちな女性天皇だが、それぞれにスポットライトを当ててみると、興味深いものがある。


●「望郷」 (湊かなえ著、文春文庫)

 湊かなえ氏の小説を前回に続きもう1冊。話の舞台となっている島のモデルは因島だとは読めばすぐに分かるが、作者がこの島の出身だということを初めて知った。「望郷」−故郷への想い。それは決して楽しいことばかりではないのかもしれない。何らかの事情で島を出た人たち、島との微妙な心理的距離、そして触れてはいけない過去...。 6つの短編からなるが、思わず「えっ?」と思うような展開で、何かが引っかかるような読後感。この作家の作品はまだごくわずかしか読んでいないが、もしかしたら結構すごい書き手なのかもしれない。


今回はなぜか「古代」の本が重なったなあ。
0 0

コメント

mixiユーザー

ログインしてコメントを確認・投稿する

<2016年05月>
1234567
891011121314
15161718192021
22232425262728
293031