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2016年05月07日21:54

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【音楽】 伊福部昭百年紀4 〜十年祭に寄せて

昨日に続き、今日も演奏会に行った。
昨日のピアノリサイタルとは全く趣の違うコンサートである。

◎伊福部昭百年紀4 〜十年祭に寄せて

 ・伊福部昭:二十五絃箏曲「胡哦」
 ・九人の門弟が贈る伊福部昭のモチーフによる讃
   −ゴジラの主題によせるバラード (芥川也寸志)
   −Omaggio a maestro A.Ifukube (池野成)
   −幻の曲 (石井眞木)
   −狂想的変容 (今井重幸)
   −Felicidades El Maestro! (原田甫)
   −Homage to Akira Ifukube (松村禎三)
   −Omaggio al maestro Ifukube (真鍋理一郎)
   −Godzilla is dancing (三木稔)
   −Hommage a A.I. (黛敏郎)
・伊福部昭:子供のためのリズム遊び
・伊福部昭:組曲「イワンと子馬」
・伊福部昭:「セロ弾きのゴーシュ」より
・伊福部昭:聖なる泉 (永瀬博彦編曲)

   水戸博之指揮オーケストラ・トリプティーク
   二十五絃箏:佐藤康子/チェロ:ドミトリー・フェイギン
   会場:渋谷区総合文化センター 大和田 伝承ホール (14:00開演)


伊福部昭の生誕百年にあたる2014年に、トリプティークによる「伊福部昭百年紀演奏会」が3回開催され、いずれの回もフル参加したが、歿後10年にあたる今年は「十年祭」として、また盛り上がりを見せている。今日は「十年祭に寄せて」と題する、百年紀演奏会の第4回だ。第1回から第3回までは、伊福部の映画音楽を組曲形式にして、フルオーケストラによる迫力ある演奏が行われた。第3回は合唱も付き、これでもかいうと盛り上がりを見せた。今日は一転して、小編成のオーケストラによる演奏会である。それにしても、まだまだ未知の作品が埋もれていたとは! 「イワンと子馬」や「セロ弾きのゴーシュ」は、今日初めて聴く作品だ。

1曲目は佐藤康子さんの箏による「胡哦」で厳かに始まる。クラシック演奏会なら大抵「さくらホール」だが、今日は伝統芸能や邦楽などに主に使われる「伝承ホール」ということで、なんだか雰囲気がいつもと違う。「胡哦」とは「(中国西方の)胡人の歌」といったような意味だが、この作品で使われている旋律は「聖なる泉」に使われたものである。映画「モスラ対ゴジラ」の中で歌われている、あの美しい曲だ。南洋の島の歌、日本の伝統音楽、唐代にシルクロードを経て伝わった音楽、これらが伊福部の中でひとつになって、「聖なる泉」そして「胡哦」へとなっていったのであろう。箏の曲をじっくりと静かに聴く機会などあまりなかったので、1曲目から素晴らしい体験だ。

2曲目以降はオーケストラによる演奏だが、今日のオーケストラは小編成だ。これまでと様子が違う。次は伊福部の門弟たちによる伊福部讃である。プログラムの名前を見ても錚々たる作曲家が並ぶ。「ゴジラ」など伊福部作品をモチーフにしつつ、それぞれの作曲家の個性が現れた楽しい作品群で、全体としてもなんとなく組曲としてまとまっているというものである。もともと伊福部昭の叙勲を祝う会のために作られたもので、それぞれの作品が単独で折に触れて演奏されることもあったという。残念ながらほとんど故人となってしまったが、こんな楽しい音楽を残してくれたことからも、伊福部門下の作曲家たちの師に対する思いが現れているといえる。難しい顔をして聴くような音楽でもないのだが、観客はクラシックの演奏会以上にみんな行儀がよい。最後の黛の曲は9人の合唱が加わる曲だが、今日は会場に来ていた伊福部さん関係者が合唱に参加。そのうちの一人の和田薫さんが、終わってから挨拶をした。やっぱりみんな楽しそう。

プログラムではこのあと「聖なる泉」となっていたが、順番を変更して「聖なる泉」は最後としたので、次は「子供のためのリズム遊び」だ。これはピアノ版ではCDで持っていて聴いていた(山田令子さんが録音したもの)が、管弦楽版で聴くのは初めてだ。そもそも、この組曲を生で聴く機会があるとは思っていなかった。戦後まもなく小学校向け教材用として作られたもので、リズムに合わせて身体を動かすリトミック教材用だという。珍しい伊福部作品だ。全10曲からなるが、わらべ歌「羅漢さん」や「あんたがたどこさ」を題材にしたものもあれば、特撮映画でお馴染みのあのメロディーも登場し、なるほど伊福部マーチの源流はこんなところにあったかと思うと、なかなか面白い。

休憩時間には、伊福部昭の自筆譜などを手に取って見ることが出来る。「聖なる泉」や「タプカーラ」や「寒帯林」など、貴重なものばかりだ。伊福部さんの自筆譜は非常に美しく丁寧で、仕事場も一切散らかっていない几帳面な性格だったというのが、よく分かる譜面だ。

休憩のあとは、影絵劇「せむしと子馬」の音楽からの組曲「イワンと子馬」と、人形劇「セロ弾きのゴーシュ」からの9曲の抜粋演奏である。「セロ弾きのゴーシュ」には、チェロの独奏が加わり、演奏するのはフェイギンさんだ。いずれも初めて聴く作品だが、聴けばすぐに伊福部さんの作品だと分かる明確な伊福部節である。「セロ弾きのゴーシュ」は滅多に演奏される機会はなく、幻の人形劇音楽とまで言われていたが、今日こうして生演奏に接することが出来たのは、これまた貴重な体験といえるだろう。シューマンの「トロイメライ」のような曲が突然伊福部の「シンフォニア・タプカーラ」に化けるような曲もあり、面白かった。アンコールとして、その部分をもう一度演奏してくれた。

アンコールは、黛敏郎のHommage a A.I. を、会場の人みんなの合唱参加でいうことになった。でも、今回は第3回の「ファロ島の歌」ほどは盛り上がらなかった。歌詞が分からない! ギリヤーク語の歌詞は覚えていないので、私も最初の一節で断念。この部分はCDになるかな?

最後は、「聖なる泉」の永瀬博彦さんによる管弦楽編曲版で締める。箏の「胡哦」で始まり、同じメロディーの「聖なる泉」で締める。やはりこの構成の方がいいに決まっている。演奏のあとは永瀬さんもステージ上に呼ばれて挨拶。

今日も楽しすぎる演奏会であった。今年も伊福部さんの作品を演奏会で聴く機会は結構ありそうだ。今日の演奏会もCDになるとのことで、そちらも楽しみである。
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