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2015年08月06日00:52

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歴史を作る文学作品

 ひとつの文学作品が、歴史のかたちに強い影響を与えるということはある。司馬遼太郎の描いた「明治」が、戦後の人々にとって「あるべき日本」というかたちを提供したのもそのひとつだろう。そして阿川弘之のいわゆる「海軍提督三部作」も、著者の意図はともかくとして、陸軍悪玉・海軍善玉というイメージを作り上げてきた。

 もちろんこのことが、明治から昭和初期にかけての「連続性」や、海軍の不作為が戦争を招いた可能性という問題について、見えにくくしたきらいがなかったとは言わない。しかし、そうした指摘を行った学術研究よりも、物語のなかで活躍する登場人物たちの生きざまが、いかに人々を惹きつけてきたか。私は何よりもそういうところに、阿川作品の大きさ、偉大さを感じざるを得ない。

 私にとっては、ほかにも『軍艦長門の生涯』や『暗い波濤』など、強い印象を受けた作品は少なくない。そして子供のころ、夢中で読んだ『きかんしゃやえもん』が、阿川さんの手によるものだったことを知ったときの衝撃は大きかった。NHKの影絵を見て、母にお願いして近所の県立図書館でこの絵本を借りてきたときから、私は阿川作品の虜になっていたのだ。

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■阿川弘之氏死去=作家、端正な鎮魂文学―「山本五十六」「雲の墓標」、94歳
(時事通信社 - 08月05日 21:01)
http://news.mixi.jp/view_news.pl?media_id=4&from=diary&id=3552424
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