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2015年07月04日22:26

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【映画】 「米(こめ)」  (今井正監督、1957年)

雨がちのすっきりしない休日。こんな日は自宅でのんびりしているのも良い。夜は先日購入していた映画のDVDを観た。

    『米(こめ)』  (今井正監督、1957年)


芥川也寸志が音楽を付けた映画を調べていたら、たまたまこの映画のDVDが見つかり、未見だったが、なんとなく良さそうな気がしたので、先日買ったのである。

58年前も前の映画で、もちろん私はまだ生まれていない。舞台は茨城県の霞ケ浦湖畔の村で、半農半漁の人々の暮らしを描いたものである。決して豊かではないが、生きるために必死な人たち。そこには、持って行き場のない怒りと諦めのようなものもある。

米作りは日本建国以来続けられている、この国の根幹をなすものである。物語は田植祭の神事から始まる。米作りは神聖な行為なのだ。

若者の楽しみといえば、酒を飲むことと、夜中に対岸の若い娘を「攻略」しに行くくらいしかない。あとは、「土浦に映画見に行っぺ」と、オート三輪で繰り出すとか。

農家の次男の次男(つぐお=江原真二郎)も、自衛隊あがりの悪友仙吉(木村功)に連れられ、何人かの若い男とともに対岸の村へ「夜這いツアー」(?)に繰り出すが、そこで見かけた千代(中村雅子)という少女に牽かれる。病気がちな父親(加藤嘉)にかわって、母親のよね(望月優子)とともに、夜を徹して働いていたのだ。夜明け前から霞ケ浦に漁に出て、昼は米作り、夜は夜でまた仕事である。それでも一家は貧しい。さらに、地主からは貸した田圃を返せなどと連日のように督促を受けている。

ぶらぶらしていた次男も、親方の勧めで仙吉と漁をはじめるが、対岸の漁場に出て密漁するなど無茶をする。対岸の村は密漁対策の逆杭を打つが、それに引っ掛かって仙吉は命を落とし、次男も危ないところを千代に救われた。

切羽詰まったよねは、ついに禁止漁の刺し網に手を出すが、監視船に見つかって網を没収され、警察への出頭を命じられる。地主は、一万円用意すれば「有力者」に話を付けてやるなどと吹き込む。次男はそっとお金を置いて去るが、よねは「いらない、返して来い」と拒む。

結局、よねは土浦の警察に行くが...。


物語は田植えの季節から始まり、稲刈りの季節で終わる。米作りの1年が物語と重なっている。オープニングは刈り取られた冬の田圃の風景だが、これが結末を暗示していたのだろうか。

会話は茨城弁で、独特の味を出している。また、当時の霞ケ浦湖畔の風景も好ましい。まさに日本の原風景ともいえる美しさだ。現在のこのあたりの風景はどうなっているのか行ってみたくなった。「都会」である土浦も、この映画と現在ではかなり様子が違っている。

音楽は芥川也寸志で、オープニングから芥川節が全開だ。一瞬「赤穂浪士」な感じ(?)にも聞こえるところもある。

観終わったあと、じわっと来るような映画であった。「いい映画」だと思う。
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