■獺狐余話(178)　/　「忘却とは、忘れ去ることなり」

●2015年04月03日(金)　　　霧雨

　▼「ナラトさん、ナラトさん。
　　　携帯に電話ですよ・・・、起きてください！」

　
　　「うーむ・・・、むにゃむにゃ、なに、電話・・・？」

　　　・・・・


　　「ああ、もし、もし・・。
　　　アアキさん・・？　
　　　そう・・・、きょうの大腸がん定期検診で、小さなポリープが２つ
　　　見つかったって・・・。

　　　そう・・、あした、参加できそう・・？
　　　そりゃぁ、出てこられたら、みんな喜ぶと思うけど・・・。

　　　ふーむ、じゃあ、ホテルに電話してみるわ。
　　　おそらく、１名の追加くらいは大丈夫だと思うけど・・・。

　　　ＪＲの神戸駅改札口で、１１時２０分、
　　　待ってるわ・・・」


　　　・・・・


　▼「ナラトさん、どうでした・・・？」

　　「ああ、予約できたよ・・・、これで６人、
　　　出られる人は、全員参加ということだ。
　
　　　１５年前とくらべると、半分になったけど
　　　『解散式』には、ちょうどいい人数だと、
　　　キツネくん、そうは思わないかね・・・」

　　「そうですね・・、時は過ぎゆく・・、ちゅう
　　　ことでしょうか・・・。

　　ああ、話は変わりますけど、
　　このあいだの『話』に、、『トートロジー(同義語反復)』ちゅうのがあって、
　　これは、単に言葉の言いかえであって、何も説明したことにならない、っちゅう
　　ことでしたね・・」


　▼「それで、オレ、ウィキペディアで、『トートロジー』を調べてみたんです。
　　　すると、『忘却とは忘れ去ることなり』、ちゅうのが、例としてあげられていました。

　　　これ、ナラトさんがゆうとった、『君の名は』ちゅうラジオ・ドラマでしょう・・・？」


　　「うわぁーっ、キツネくん。
　　　それ、ボクが東京時代に聴いた、懐かしいＮＨＫのラジオ・ドラマで、
　　　『忘却とは忘れ去ることなり。忘れ得ずして忘却を誓う心の悲しさよ』という
　　　冒頭のナレーションは、つとに有名だよ・・。

　　　夜の８時ごろ、放送が始まるのだけど、この放送の時間帯には、銭湯が
　　　とくに女湯はガラガラになった、という伝説があるほど、人気のラジオ・ドラマ
　　　だったのだよ。

　　　映画にもなって、後宮春樹の佐田啓二、氏家真知子の岸惠子、ともに
　　　よかったねぇ・・・。
　　　東京の数寄屋橋で再会しようという『メロドラマ』なんだけど、
　　　子どもごころにも、『恋』とはこんなものか・・、って思ったよ。

　　　『真知子巻き』という、マフラーの巻き方も流行ったねぇ・・・」


　▼「そうですか・・・。
　　　で、オレ、その『忘却』なんですが・・・、
　　　このあいだの『日記』のタイトルを、『哲学するキツネ』ちゅう題にしたでしょう。

　　　ところが、１年前の『日記』にも、同じ、『哲学するキツネ』があるのです。
　　　そのとき、ナラトさんが、哲学のすすめ、みたいな『本』の『話』をしているのですが、
　　　もう、全然、覚えていないんですよ。

　　　　『忘却とは、忘れ去ることなり』、実感しました・・」



　　　　　


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