小袋にこめられた砂時計
夜の凪をさかさに游ぐさかなは
進み化す体のしるべを辿り
望月の子守唄をききながら眠る
新世界へのトンネルを抜け
白く眩しい光の中で
さかなは天地を返され
水から抜けだした痛みに泣く
砂時計は時を落としはじめる
空にさらされた太陽の世界で
同胞を待っていた両手が包みこむ
砂の上に自らの足で立ってから
何を求めて歩みだすのか
ゆるやかに低くなる足元の
その砂の限りを知ったとき
もと来た世界を思い出せずに
海の色した涙を流してとまどう
砂時計は止まらない
漏斗になった中心を恐れ
その縁を歩きながら空を見る
落ちていった同胞たちの面影を
新たに返した砂時計を
ガラス越しの白く眩しい光をあびながら
行く先を思い出そうとまた忘れようと
ふと辺りを見渡せば新しい同胞たちが
まなこに映る闇に泣いている
最後の砂は音もなく落ち
もとの世界へ散らばっていく
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