田舎の丘の伯父の家から
やっと戻ったベッドの上で
仕入れて来た顔が閉じた目に開かれる。
ぞろぞろと溢れる笑みのかずと
オセロは裏返しの泣きのかず。
従姉のネエさんののっぺらぼうに
三十五年ぶりの顔が真ん中にハマる。
しかめっ面の叔父はだれとでも犬猿。
ヤンキーな従兄のてっぺんの髪はうすれ
眉毛に伸びて好々爺方面へ。
全ての家で末っ子を兼任する従弟の
ハデな笑顔のまぶたは山盛りに腫れている。
私は末席でコーラとおにぎりで過ごす。
一番うるさいはずの伯父の顔は
白い甕の中で神妙におさまって
線香が自由に舞っている。
どアップの伯母さんの瞳は
円らな黒い水晶のようで
澄んだ水の流れが水無川のように
皺の中で消えたり現れたり。
ログインしてコメントを確認・投稿する