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2014年12月02日18:58

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詩『AKIRAー忍法帖外伝』


忍びであろうが寒いものは寒い
十二月を師走と言うらしいが
師匠も走って逃げるほどの寒さ

 ふるさと寒く衣打つなり

とはよく言ったものだ
田舎は風が強くて衣が音を立てている
仲間は皆やられてしまった
しかし行かねばなるまい
陽が沈みかけている


高さが四尺ほどの土塀の上を
二軒伝っていくと通りに出て飛び降りる
それまでの間
【一軒目、
左が空き地
右は屋敷の生け垣、途中から生け垣無し
土塀十字をまっすぐに進む
【二軒目、
左右共に屋敷
十字一歩目で土塀無し
二尺を飛びこえてまた土塀
半軒先左が生け垣、右は壁
あとは野となれ山となれ


さて、一番の難所は土塀を飛んだ先
二つの屋敷の庭の真正面を通る
屋敷の者に見つかればただではすまない
しかし行かねばならぬ


「えいや!」
と、土塀に飛び出たその時、
「あきちゃん、何しょーとー、危なかばい」
飯炊き女は気にするな
微笑みの一つもくれてやれば良い
「お母さんに言うばい」
ええい、仕方ない
「はーい」
と誤魔化しながら一軒目を渡りきる


「はっ!」
と、土塀に乗ったは良いが
大きな音が立ってしまった
「あきらかー、母ちゃんが御飯てぞ」
右の屋敷の主に感づかれたが
どうせ当てずっぽうに違いない
しかし、いい匂いである
はや足であともう少しの所
左の屋敷のジョンが吠えて
土塀の上に前足を掛けている
「あきらぁー!」
無念
今日の所は諦めるしかなさそうである
「はーい」


華麗に飛びおりて玄関に回ったあと
拙者を待っていたのは、やはり
カレーであった


「おわー!カツカレーやん!」





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