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2014年12月01日22:08

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詩『療養』


処置室の方で唸り声
叫んでいる老人
ダレカを傲慢に呼んでいる
ナニカに怖れ戦いている
彼の過去に何があったのか
あるいは今、何を見ているのか

 父を見送ったのは一年前
 両親に最期の時間を
 幸せに過ごしてもらうよう奔走したのは
 私のためであった
 父がいなくなるということ
 足元の地面が崩壊するような
 恐怖を振りはらう時間稼ぎとして

私は病院のベッドで
仕事の約束、母、妻のことを考えながら
点滴のしずくが落ちるのを見ている

 前回の肺炎が落ち着いたあと
 気になっていた母方の伯父の見舞いに行った
 伯母は伯父の目蓋をこじ開けて
 母が見舞いに来た事を知らせる
 伯父は目を少しだけ動かしかすかに唸った
 いとこの姉さんは壁を向いている
 伯母は豪快だった夫の思い出を
 遠い目をして話した
 「ちょと前までは語いよらしたとばってん」

 十日前に父の一年祭を済ませたばかり
 五年前に奥さんを亡くされた
 神社の宮司さんは母にだけ優しい
 「居らせんかと家内の部屋を見よりました」
 父方の叔父は帰り際
 遺影に向かってにこやかに言う
 「にいちゃん、また会いに来っけん」

私はまた肺炎になってしまった
あと二日、病院に点滴を受けにいく
今、姉からメールが届いた
「そんなに頻繁に肺炎になって大丈夫なん?」
心配性の姉に申し訳なく、私は
「頑張って元気になります〜(^^;;」
と返した



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