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2014年06月29日20:43

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【音楽】 都響演奏会 作曲家の肖像シリーズ/ヨゼフ・スーク

久しぶりに東京都交響楽団の演奏会に行ってきた。「作曲家の肖像」シリーズで、今回の作曲家はヨゼフ・スークだ。プログラムは次のとおりである。

・スーク:組曲「おとぎ話」
・スーク:交響詩「夏の物語」

  指揮:ヤクブ・フルシャ
  会場:東京芸術劇場コンサートホール

チェコの作曲家といえばドヴォルザークが突出して有名だが、他にも優れた作曲家は多い。ドヴォルザークの弟子であるスークもその一人だ。しかし、スークだけのプログラムで客が入るのかと心配していたら(私が心配することではないが)、会場は満席に近い状態だった。意外と(?)スークを聴きに行く人も多いようだ。

指揮者フルシャの演奏はおそらく初めて聴くが、1981年生まれの若いチェコの指揮者ということである。

1曲目の「おとぎ話」は楽しい曲だ。元の話はこうである。森で迷った王子ラドゥースが敵国に入ってしまい捕えられる。「敵国」の王女マフレナはこの王子に恋してしまい助け出して脱出する。しかし、国に帰ると王である父は亡くなっていた。敵国の王子を助けたマフレナは母である王妃ルナの怒りを買い、呪いによりラドゥースの記憶からマフレナの存在を消してしまう。悲しみにくれたマフレナは城の前のポプラの樹に姿を変える。その樹が伐られる時に血が流れ、それに触れたラドゥースにマフレナへの愛の記憶が戻る。マフレナも蘇りめでたしめでたし、という話だ。

いかにも正統な(?)「おとぎ話」っぽい展開だが、このストーリーを知らずに曲を聴いても、事件の始まり→幸福からどん底へ→苦難を経て最後は愛の勝利の大団円、とイメージ出来るほどよく出来ている曲である。

ヴァイオリンソロで弾かれる「王女の主題」の美しいメロディー、明るいポルカのリズム、悲しみの葬送音楽、呪い、そして愛の勝利。フルシャの指揮もこの曲の魅力を最大限に伝えようとしているようで、オケもそれに応えて「おとぎ話」のストーリーを音楽によって楽しませてくれた。

スーク自身も、師ドヴォルザークの娘オティーリエとめでたく結婚する。「おとぎ話」も実生活もめでたしめでたしだ。この曲の「王女の主題」はスークがオティーリエに寄せた想いでもあるという。

しかし、このあと師であり義父であるドヴォルザークの死、続いて愛する妻オティーリエの死と、運命はスークを悲しみのどん底に突き落とす。ここから作風は思索的になり、「アスラエル交響曲」から「夏の物語」を経て「人生の実り」に至る訳だ。

2曲目の「夏の物語」は標題からして組曲「おとぎ話」のような作品を想像しがちだが、そんな訳でだいぶ雰囲気の違う作品なのである。「物語」といっても特定のストーリーに基づくものでもなく、自然の力と輝きが漲る「夏」に力を得ようとして、人生を深く見つめ直すような作品なのである。演奏時間が50分を超える大曲で、大きく盛り上がるような作品でもない。演奏によっては長いだけの退屈な曲になってしまうおそれがありそうだが、フルシャは、この作品の深いところを丁寧に取り出して、しっかりと聴かせてくれたと思う。素晴らしい演奏だった。

指揮者フルシャの祖国チェコの作曲家への熱い想いが伝わるような演奏で、今日の演奏を聴いて好感が持てた。

余談だが、ハープ奏者2人のうち1人は男性だった。男性のハープ奏者はあまり見た記憶がない。(でも、決して女性専用の楽器ではないはず。)

演奏会が終わり外に出ようとすると、池袋はゲリラ豪雨の真っただ中で、激しい雷雨だった。これでは外を歩いてすぐ目の前の駅に行くのも困難だが、幸いなことに池袋駅までは地下でつながっている。電車に乗って新宿に着く頃には小降りになっていた。

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