週末はずっと雨らしいので、今日は午前中は自宅で映画鑑賞をした。
観たのは「空の大怪獣ラドン」(1956年、東宝)だ。
ラドンはその後のゴジラシリーズにも何度か登場するが、どうも地味な脇役怪獣という印象がある。
しかし、ゴジラの出て来ない東宝怪獣映画の中でも、この「空の大怪獣ラドン」は、傑作と言っていい。
公開は自分が生まれる前であり、リアルタイムではもちろん観ていないが、今は映像ソフトにより何度でも観ることが出来る。
最初の方は、ラドンが登場するまでは、空どころか地下の炭坑が舞台だ。
「地球温暖化」なんて言葉が出てきてちょっと驚く。58年も前からすでにそういう認識はあったのか...
阿蘇の炭坑で起こる不可解な殺人事件。行方不明の坑夫(五郎)が疑われる。
これはラドンの仕業に違いないと思ってみていると実は違うのである。
メガヌロンと称する巨大トンボの幼虫(ヤゴ)なのである。
化け物ヤゴを封じ込めるのに成功したかに思えたが、技師の河村(佐原健二)も閉じ込められてしまう。
そんな中、謎の飛行物体が現れる。
北京、マニラ、沖縄、東京から、その飛行物体のニュースを伝えている。
沖縄からニュースを発信するのは米国人。沖縄はこの頃は「アメリカ」であったのだ...。
音速を超える飛行物体が、「飛行機雲」を残して高速で飛び回る。
この騒ぎの最中にわざわざ阿蘇で写真を撮っていた(アホな)カップル(心中扱いされている)が遺した写真が手掛かりになりそうだ。
行方不明だった河村技師が発見されるが、完全に記憶を失っていた。
恋人のキヨ(白川由美)の飼っていた文鳥の卵の孵化を見た河村は、そこから記憶を取り戻す。
閉じ込められた坑内で見たのは、ラドンが卵から孵化するところであり、ラドンは炭坑を襲ったメガヌロンを餌にしているのであった。
謎の飛行物体はラドンであった。
古生物学者(平田昭彦)によって、持ち帰った卵の破片が分析される。電子計算機を使って大きさも推定される。このあたりは科学的(?)だなあ。
「原水爆の実験により地底にも変化が生じた」とする、ゴジラにも通じる話も出てくる。
やがてラドンが現れ、九州を破壊しまくる。
当時出来たばかりの西海橋も破壊してしまう。
(これは、怪獣が壊すことによって観光宣伝になるという効果の先駆けだったらしい。)
西海橋の破壊シーンが秀逸である。どこまでが実写でどこまでが模型か分からないほど。
破壊シーンの描写が秀逸なのは、福岡天神でも同じ。
昭和31年当時の福岡天神そのままの造形(当時はもちろん生まれていないが)で、細かいところまで素晴らしい出来だ。
そもそもラドンは火や光線を吐いたり、踏みつぶしたりしない。
飛翔する際の翼が引き起こす風力に依ってのみ町を破壊するのだ。
ただ、西鉄電車がひっくり返った際の床下が、明らかに模型。
(このあたりは鉄道模型好きだから気付くだけか。)
やがて姿を消したラドンは、動物の持つ帰巣本能から阿蘇にいると推測される。
そこで「文句の持って行き場のない被害」に対して、阿蘇へのミサイル攻撃をする。
阿蘇山の爆発を誘発し山麓が壊滅する危険があるという反論を押し切っての敢行だ。(こういう選択をせざるを得ないこともあるのだ。)
ラドンは実は2羽いたということが最後に分かり、「あれ、どこか見落としたか」と思ってしまう。
最後は溶岩にはまった1羽を助けようと、もう1羽も溶岩にはまって焼け死んでしまう。
ちょっとあわれなような切ない幕切れだ。
「ゴジラが出て来ない」というだけで、地味な扱いになっている気がするが、なかなかよく出来た映画である。(のちの「ゴジラ対ナントカ」シリーズよりはるかにいい。)
平田昭彦の学者役、田島義文の新聞記者役も、しっくりする。(他の役もしているのに、なぜかそんな印象が強い。)
若い頃の白川由美の気品ある美しさもいいね。
伊福部昭の音楽も、もちろんはまっている。
「映画の進行を邪魔しないように抑えるところは抑えて、音楽でカバーするところはジャンジャン鳴らす」といったとおりだ。
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