普段よく聴いている音楽は、後期ロマン派から近代あたりになるのだが、たまにはバッハやテレマンを聴きたくなることがある。という訳で、今日は、さいたま市にある彩の国さいたま芸術劇場で、バッハとテレマンを聴いてきた。この楽団員の知合いからチケットをもらったから、ではあるけれど。
今日のプログラムは次のとおり
・G.P.テレマン: 序曲 ニ長調 TWV55:D23
・J.S.バッハ: ヴァイオリン協奏曲 ニ短調 BWV1052R
・G.P.テレマン: ターフェルムジーク 第2集 序曲(組曲) ニ長調 TWV55:D1
・J.S.バッハ: ブランデンブルク協奏曲第1番 ヘ長調 BWV1046
・G.P.テレマン: ターフェルムジーク 第2集 コンクルージョン(終曲) ニ長調 TWV50:D9
指揮:小田透
管弦楽:マーキュリー・バッハ・アカデミー
ヴァイオリン&ピッコロ・ヴァイオリン:高田あずみ
(会場:彩の国さいたま芸術劇場 音楽ホール)
「マーキュリー・バッハ・アカデミー」は、水星交響楽団のメンバーを中心に、名前のとおりバッハの曲を演奏することを目的に結成された、レベルの高い演奏をする楽団である。 さいたま芸術劇場に行くのは2度目で、前回もこの楽団の演奏会で、バッハの「マタイ受難曲」だった。
普段テレマンはあまり多くは聴いていない。最初に演奏された序曲ニ長調もたぶん初めて聴く曲だ。なんでも、この曲をやろうと決めた時点では印刷された譜面が存在せず、手稿譜のコピーを取り寄せたのだという。しかしその直後印刷された楽譜が出版されたとの情報が入り、判読不能な譜面の「解読」をしなくて済んだという。なんだか、すごい珍曲から始まるようだが、心地よい音楽で、良い雰囲気で入ることが出来た。この曲はフルートとファゴットを独奏楽器とする7曲構成である。「序曲」というと1曲だけかと思ってしまうが、7曲で「序曲」である。
次はバッハのヴァイオリン協奏曲ニ短調だが、案内をもらった時にどんな曲だろうかと思った。しかし、ニ短調という調やBWV番号から推察して、チェンバロ協奏曲第1番の「原曲」だろうかと訊いたらそのとおりだった。復原された「原曲」で、RはReconstructuredという意味らしい。(この辺りの知識には疎いが、バッハファンには常識なのだろうか。)
ヴァイオリンソロは高田あずみさん。曲はやはりお馴染みのチェンバロ協奏曲第1番だが、いつもチェンバロやピアノで聴いている独奏部分がヴァイオリンで奏される訳で、新鮮な響きがあった。そのヴァイオリンが凄すぎる。事前に「高田さんのヴァイオリンはすごいよ〜」とは聞いていたが、全くその通りであった。チェンバロで弾くようなたくさんの音をヴァイオリンで弾く訳だし。
後半は、テレマンのターフェルムジーク第2集の序曲(組曲)と終曲でバッハのブランデンブルク協奏曲第1番を挟むという、面白い構成。
最初の「序曲」(組曲)は5曲で構成される。ターフェルムジークは日本語でいえば「食卓の音楽」であり、もともと食事でもしながら聴くような音楽。まさに、いつも書いているような(?)、「聴きながらくつろぎ中」な音楽なのである。第3集まであり、それぞれ序曲(組曲)、四重奏曲、協奏曲、トリオソナタ、ソロソナタ、終曲から成り、まるでバロック音楽のデパートなのである。今日聴いた第2集の「序曲」は、独奏楽器はトランペットとオーボエで、トランペットの音が華やかに鳴り響く。コンサートホールの席にじっと座って聴くのもいいが、やはり美味しい料理と酒とともに聴いてみたい曲だなあ。
バッハのブランデンブルク協奏曲では、再び高田さんが加わる。今度はピッコロ・ヴァイオリンという、普通のヴァイオリンより小さいヘ長のヴァイオリン。この楽器を生できちんと聴けるのは珍しいかもしれない。少なくとも記憶にはない。独奏楽器はこの他にホルンとオーボエが加わり、お馴染みの曲が心地よく響く。
最後はテレマンのターフェルムジーク第2集の「終曲」で賑やかに締める。ヴァイオリンのソロ演奏のところを、メンバー全員が交代して順番に演奏していた。こういうのも面白い。
今日のような小編成の作品は、一つ一つの楽器の音がよく聞こえて良い。管楽器奏者が、トランペットやオーボエをはじめみんな上手いのはさすがであった。だから音楽が心地よく響く。
軽快なテレマンと重い(?)バッハを、短い時間にいろいろと楽しめたコンサート。小難しいことは無しにして、音楽そのものを楽しめたコンサートだった。
ログインしてコメントを確認・投稿する