空から、紙ひこうき
確かに、空から
引き戸を開け放なした縁側を抜け
ゆるやかに旋回しながら
私に向かって降りてくる
*
幼い頃、すでに私は結婚していた。
姉は、相思相愛の私と裏のジュンコちゃんとを是が非でも結婚させたがっていて、というより、結婚式に憧れていて、にわか神父になり、裏庭の結婚式をたったの三人で強行したのだ。私は隣のミッちゃんにバレないかと恐れていたのだが。
小学校に上がる直前、ジュンコちゃんもミッちゃんも引っ越してしまい、結婚生活は別居のまま終わった。
何故か順ちゃんの、ではなく、美っちゃんの泣きじゃくる声と色白の顔が今も記憶に残っている。
「絶対また会いに来るからね」
*
小学校に上がった私は、高熱を出すと、その熱に酔ってしまうのか、いつも歌い踊るのだった。
ある時小学校を数日休み、布団をかぶっていた。
背中に貼りついた地球が
ゆっくりと私を飲み込もうとしていた
部屋の壁は遠退き
私はゴマ粒の大きさになって
襖の向こうのボンボン時計は
激しく首をふりつづけ
突然、耳元で爆発をはじめた
“ボーン!ボーン!ボーン!・・・・・・”
とうとう肉がとろとろに溶けだし
ブヨブヨの肉を私は人指し指で差して
恐ろしさをオモチャにしながら
やがて幻を抜け、夢へと
いつもそうだった。ただ一つ、その日だけ違ったのは、
紙ひこうき
西陽を浴びて白く
枕元へ静かにおちた
「早くよくなってね」
と書かれただけの
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